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高田哲氏 森山和泉氏 森山さんの漫画制作の様子。「泣いたり笑ったり 発達障害の双子の歩み」を本紙で連載中 髙田佳代子氏 髙田さん(左端)が絵本を読み、和やかな雰囲気に包まれる親子カフェ=神戸市垂水区小束山手2
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高田哲氏

森山和泉氏

森山さんの漫画制作の様子。「泣いたり笑ったり 発達障害の双子の歩み」を本紙で連載中

髙田佳代子氏

髙田さん(左端)が絵本を読み、和やかな雰囲気に包まれる親子カフェ=神戸市垂水区小束山手2

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森山和泉氏

森山さんの漫画制作の様子。「泣いたり笑ったり 発達障害の双子の歩み」を本紙で連載中

髙田佳代子氏

髙田さん(左端)が絵本を読み、和やかな雰囲気に包まれる親子カフェ=神戸市垂水区小束山手2

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 神戸新聞子育てクラブ「すきっぷ」の創設を記念した神戸大学・神戸新聞社連携シンポジウム「つなぎ いかす 地域の力~みんなで つながる 子育て」がこのほど、神戸新聞松方ホールで開かれた。神戸大学が神戸新聞社や他大学、兵庫県などと進める「地(知)の拠点大学による地方創生推進事業」の一環。「すきっぷ」は専門家の助言や親同士がノウハウを共有し合える場を提供し、子育てを地域で支える基盤づくりを目指している。シンポジウムでは大学、子育て支援団体、母親の立場から、子育ての課題とあるべき姿を語り合った。

▼講演「子どもの発達と子育て~発達のステージに合わせたふれあい」

神戸大学大学院保健学研究科長 高田哲氏

 子どもの「眠る」「食べる」「動く」「学ぶ」について考える。

 まず「眠る」。生まれたばかりの子どもは3カ月ほどで、夜眠り朝起きるリズムができてくる。眠りは心(頭脳)と身体の栄養だ。眠りを誘導するホルモン「メラトニン」は光を浴びると分泌されない。夜泣きが起こるのは体内時計のリズムが狂うからで、夜は早く照明やテレビを消し、昼間は思い切り太陽の下で遊ぶといい。お気に入りのタオルに触れるなど〝儀式〟があると眠りにつきやすい。

 次に「食べる」。母乳には乳児に最適な栄養があり、消化、吸収しやすい。7カ月を過ぎるとそれだけでは栄養が足りなくなるので離乳食が必要になる。食べたそうにしたら始めればいい。「卒乳」も焦らず自然にやめるのを待つ方がいい。指しゃぶりも1歳半くらいになると自然にやめるようになる。口は食べること、指は遊ぶことで忙しくなるからだ。5歳以降も続くようだと、かみ合わせが悪くなるので対応が必要だ。

 肥満は遺伝や誤った食習慣などが原因だ。乳児期に高いカロリーのミルクを飲むことで血糖値が上がり、インスリンが過剰に生産される。そのことを大人になっても体が覚えており肥満になるという研究報告もある。

 次は「動く」。首のすわりは4カ月、お座りは8カ月、伝い歩きは13カ月、というように神経系の発達は頭部から足の方へ移っていく。それに応じて遊ぶおもちゃを考えるといい。10カ月ほどで「バイバイ」を始めるが、言葉が出る前提に模倣があることを示している。「バイバイ」の仕方にもいろいろあるが、手のひらをいつまでも自分の方に向けて振るようであれば自閉症などの疑いがある。

 最後に「学ぶ」。36カ月までの子どもを対象に読み聞かせの調査したところ、開始時期が早く、期間が長いほど言語能力が高いという結果が出た。神戸大の学生に印象に残っている絵本と、それがなぜ印象に残っているのかを聞いたところ、挿絵や内容とともに母親が何回も読んでくれた、読み方が印象的だった、と答えた学生が多かった。肉声で読むことが大事だ。

 神戸大では、1500グラム未満で産まれてきた子どもたちとその家族のための教室を20年続けている。そこから活動が広がって、発達が気になる就学前の子どもたちや、重度な障害を持つ子どもたちへの医療的ケア支援事業なども行っている。学んだことを生かし、神戸新聞が取り組む「すきっぷ」についても、全力でサポートしていきたい。

▼パネルディスカッション「みんなで つながる 子育て」

【出席者】

■神戸大学大学院保健学研究科長 高田哲氏

■クリエイター(神戸新聞連載のエッセーと漫画「泣いたり笑ったり」作者)森山和泉氏

■NPO法人「子育ち家族サポートふるーる」副理事長兼事務局長 髙田佳代子氏

【コーディネーター】

■神戸新聞論説副委員長 村上早百合

-育児の現場で何が問題になっていて、私たちに何ができるかを考えていきたい。自己紹介を兼ねて普段の活動を聞かせてほしい。

 髙田佳 神戸市垂水区で子育て支援活動をしている。阪神・淡路大震災で長田区の自宅が被災。当時2歳9カ月の娘と9カ月の息子がいたが、夫が仕事で多忙だったため苦しい子育てをしたことが活動の原点になっている。0~1歳の子どもとママたちのためのカフェ「ベビーガーデン」を2カ所で月4、5回運営している。子どもを遊ばせて、ゆっくりお茶しながらおしゃべりを楽しんでもらっている。兵庫県立美術館では一時保育も開催している。

 森山 発達障害を持つ17歳の双子の娘がいる。子育ては苦労の連続で、自分たちの思いを受け入れてもらいたいと思い、娘たちが小学2年のころから漫画を描き始めた。その後、担任教諭や友だちの母親にも配るようになった。ある男の子から「僕と同じ子が世の中にいるんだね」と言われてうれしかった。娘たちは絵を描くことが大好きだ。その絵をたくさんの人に見てもらおうと「わが子プロデューサー」として活動もしている。

 高田哲 私は小児神経科の医師で発達障害や脳性まひ、てんかんなどの子どもを診ている。大学では外来をしながら若い専門医を育てる指導医でもある。もともとは妊娠・出産時の母子を診る周産期医療を担当していたが、そこから巣立った子どもの中に児童虐待の症例が出て、地域でそのような子どもと親をサポートできないかと子育て教室を始めるようになった。

-子育ての現場で感じている悩みを聞かせてほしい。

 森山 発達障害の娘たちは環境変化を好まないのだが、夫の仕事で転勤を繰り返してきた。沖縄に転勤したとき、地域の人たちが見知らぬ娘たちに声を掛けて、かわいがってくれた。それまで閉じていた私の心を開かせてくれた幸せな4年間だった。子育ては親子だけではできないと強く感じた。父母だけで子どもを間に挟んで手をつなぐのはきゅうくつだ。先生や近所の方が輪に加わった方が伸び伸びと育つと感じる。

 髙田佳 地域の幼稚園の先生から「一人のお母さんが『ベビーガーデンがなかったら生きていけなかった』と話していた」と聞いた。その母親は子どもが1歳半のころから他人を突き飛ばすようになり、子どもに怒鳴ったり泣いたりと苦労していた。2人目を出産してからの子育てで「あかん、もう耐えられへん」とメールが来たので、駆け付けて4時間ほど話を聞いたこともある。ベビーガーデンの中でも、母親側から相談があれば専門家を紹介し、心情の変化に寄り添うようにしている。細い糸をつないでいると、だんだん太い糸になっていく。

-高田さんは医療現場でどのような問題を感じているのか。

 高田哲 子どもの発達に対応する中で、自然と母親、父親へと成長していく。ただ子どもが発達上の問題を抱えているとそうはいかない。そういうときには、現在の発達状況を説明した上で、次のステップを考えるように提案している。親が受け入れやすいように話すことが専門家の役割だ。知識を持って子育てができる家族を育てていきたいと思っている。

-子育てはどうしても孤立しがちだ。楽しく子育てできる社会にするにはどうすればよいのか。

 髙田佳 地域で「茶ミット」をしている。お茶を飲みながら、地域の主任児童委員、保健師、子育て応援プラザの保育士などが集まって3カ月ごとに情報交換をしている。情報共有をして、どこでも同じように関われる体制をつくろうとしている。同じ立場の人とつながる機会も大切だ。「すきっぷ」を利用して居心地のいい場所を見つけてもらえたらと思う。

 森山 見知らぬ土地では、まずはあいさつから始めて、地域の中に積極的に入っていく努力をした。当初は娘たちが地域の中で育ってもらいたいという願いがあったが、娘から「いつもいる角のおじいちゃんが、きょうはいなかった」と聞いて、心配になって見にいくこともあった。子どもを通して地域で双方向の人間関係ができていくことを感じた。

-互いにつながる場所が重要だ。そのためにできることは。

 高田哲 人は元来、小集団をつくって暮らしていた。母と父だけで子育てすることになったのはつい最近のことだ。そのための新しい子育ての仕組みづくりが追いついていない。医療職や大学生、さらにはさまざまな職種の方が知識を共有し、世代を超えて地域をつくり直していかなければならない。

-きょうの議論で地域につながる場をつくることが必要だということを確認できた。神戸新聞が立ち上げた「すきっぷ」のサイトを通じて、地縁だけに限らない新しいコミュニティーづくりに貢献していきたい。支援が必要なのに情報が届かない人も多い。大学、行政、地域で協力しあって、子育てをめぐる課題の解決につなげていきたい。

2015/12/19
 

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