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特攻訓練を続ける宮﨑亘さん(後列右端)ら徳島白菊隊の隊員。型紙で視界を狭くした飛行眼鏡を着けている
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特攻訓練を続ける宮﨑亘さん(後列右端)ら徳島白菊隊の隊員。型紙で視界を狭くした飛行眼鏡を着けている

  • 特攻訓練を続ける宮﨑亘さん(後列右端)ら徳島白菊隊の隊員。型紙で視界を狭くした飛行眼鏡を着けている

特攻訓練を続ける宮﨑亘さん(後列右端)ら徳島白菊隊の隊員。型紙で視界を狭くした飛行眼鏡を着けている

特攻訓練を続ける宮﨑亘さん(後列右端)ら徳島白菊隊の隊員。型紙で視界を狭くした飛行眼鏡を着けている

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 1945(昭和20)年、神風特別攻撃隊徳島白菊隊に組み込まれた宮﨑亘(わたる)さん(88)=神戸市長田区=は、練習機「白菊」で特攻に向けた訓練を続けた。

 「海軍では地形を参考に飛ぶんやなくて、計器を頼りに操縦する。目印のない洋上で作戦を展開するからでしょうな。沖縄まではずっと海やし、毎日ひたすら計器飛行の練習やった。飛行眼鏡のレンズのところに、内側から型紙を貼り付けるんです。下の方に小さな穴を開けてね。そうすると景色は見えず、確認できるのは計器だけになる」

 「そのうち夜間訓練ばっかりになった。昼間はブラブラしてて、夜に白菊に乗る。小松島(徳島県)から和歌山の方まで行って帰ってきたり、小豆島(香川県)から明石海峡を通って大阪湾を回ったり。難しかったですね、機体を水平に保つのが。目標物が何もない真っ暗闇だと、ほんまはまっすぐなのに傾いているように感じてまう。低空飛行の練習もあったな。山あいを『なんぼでもいいから低く行け』と言われて、恐る恐る飛びました」

 「沖縄の周辺では、敵の船がごま粒をまき散らしたように、うようよおる。喜界島(鹿児島県)から先は、敵の戦闘機が3層になって待ち構えてる。そう言われてたな。白菊は見つかったら簡単に撃ち落とされる。夜間飛行も低空訓練も、何とか敵艦隊までたどり着くためのものやったんでしょうね」

 訓練では当初、操縦員ばかり数人で乗り込み、交代で操縦かんを握った。ところが、5月中旬ごろ、操縦員と偵察員のペアでの搭乗訓練に切り替わる。

 「白菊は操縦席が前にあって、偵察員が乗る後ろのスペースには4、5人が乗れた。教官がおらんときは『今晩、飯食いに行こうや』とか、くだらない雑談をしてね。戦争の話はあまりしませんでしたな」

 「ペアが決まったいうことは操縦員、偵察員の2人組で特攻に行くということ。『出撃が近いんやな』って思うとったら、実際に1週間かそこらで命令が出ました」

 「そのころになると、白菊に対する思いも変わってきて。徳島に来た当初は一人前になったつもりでおったから、『クソ、何で白菊なんかに』という感じやった。それが、だんだん愛着がわいてきてな。操縦もしやすいし、『これもかわいい飛行機やな』『生死をともにするんやな』ってね。時代遅れの練習機やけど、わしの棺おけになるんやもんね」(小川 晶)

2013/8/20
 

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