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新ひょうごの医療
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神戸新聞NEXT 佐藤雅昭・東京大講師 バル・マップ法の意義を語る西神戸医療センター呼吸器外科の大政貢医長=神戸市西区糀台5
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佐藤雅昭・東京大講師

バル・マップ法の意義を語る西神戸医療センター呼吸器外科の大政貢医長=神戸市西区糀台5

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 兵庫県内の医療の最前線に迫る「ひょうごの医療」は、2009年の連載開始から44シリーズを数えた。今回から装いを新たに、診療に役立つ情報をよりタイムリーに取り上げる新シリーズを始めます。初回のテーマは「進化する診療」。

◇切除予定箇所に着色 範囲絞り込み負担少なく◇

 09年1月3日の連載第1回は、肺がんの先進的な治療法として完全胸腔鏡(きょうくうきょう)手術を取り上げた。胸に数センチ程度の穴を複数開け、カメラと器具を挿入して行う手法だ。開胸手術より体への負担が少なく、その後急速に普及した。

■特別な機器不要

 最近は、肺の切除範囲を最小限にし、早期の社会復帰を図る「バル・マップ(VAL-MAP)法」が注目されている。兵庫県内では、神戸市西区の西神戸医療センターなどがいち早く取り入れた。

 「肺のコンピューター断層撮影(CT)が可能な病院ならば、特別な機器は不要。早期がんの手術を容易に行える方法」と、バル・マップ法を開発した東京大医学部の呼吸器外科講師、佐藤雅昭さん(42)は強調する。

 西神戸医療センターは昨秋以降、7人の患者にバル・マップ法による手術を実施した。手順は次の通りだ。

 患者の胸部CT画像を基に、肺全体と、内部で細かく枝分かれする気管支の3D画像を作製。安全とされる腫瘍の周囲2センチ以上の切除を確保するため、手術予定図に3~5カ所の目印を付けておく。

 バル・マップ法を行うのは手術前日。喉へのスプレーと点滴で麻酔をかけ、口から胃カメラより細い気管支鏡(直径4~6ミリ)を入れる。気管支鏡の画像と予定図を照らし合わせ、肺内部の切除予定箇所に目印として食品にも使う青い色素を噴射する。所要時間はわずか20分程度。再びCTで検査し、目印がずれていれば予定図を修正する。

 同センターの呼吸器外科医長、大政貢さん(50)は「バル・マップ法は切除範囲を最小限にできるので、以前にがんの手術で肺を切除した患者さんも手術しやすくなる。画期的な手法」と評価する。

 同センターでバル・マップ法による胸腔鏡手術を受けた患者は、いずれも術後数日で退院。その後の経過も良好で、定期的に診察や検査のため、徒歩で通院しているという。

■生活の質向上

 日本人の死因1位を占めるがんのうち、死亡者が最多の約2割に上る肺がん。早期なら腫瘍の切除手術が第1選択となる。右肺に三つ、左肺に二つある肺葉を単位に切除するのが標準的な治療法だ。

 だが、診療の進化で生存率が伸び、術後の生活の質が重視される中、切除範囲を絞る「縮小手術」が求められるようになった。

 縮小手術には、肺葉の一部を切る「区域切除」と、がんの周囲のみを除く「部分(楔(くさび)状)切除」がある。だが、肺は手術時にはしぼむため、正確な切除には高度な技術を要した。

 切除範囲を正確に把握するため、1990年代後半から小さな針を目印として刺す方法が行われてきた。だが針を刺す際に血管に空気が入り、脳梗塞や心筋梗塞を起こす恐れもあった。この解決策がバル・マップ法だ。

 佐藤さんによると、対象は最大径2センチ以下の早期がんと、大腸がんや子宮がんからの小さな転移。2013年以降、全国約20の医療機関が共同研究として約500例を手術し、切除成功率は99%。兵庫県内では、県立尼崎総合医療センターが行った。

 バル・マップ法は現在は公的医療保険の適用外だが、佐藤さんは18年の保険適用を目指し4月、国の「先進医療」認定を申請した。佐藤さんは「全国の病院に広め、大腸ポリープ切除並みの手軽な治療法にしたい」と意気込む。(山路 進)

 【早期肺がん手術の実施病院と費用】早期肺がんへの手術は、兵庫県内各地にある国指定14カ所、県指定10カ所のがん診療連携拠点病院などで実施。完全胸腔鏡(きょうくうきょう)手術の費用(患者3割負担の場合、入院費を含む)は30万~50万円。バル・マップ法は気管支鏡検査とほぼ変わらず、患者負担はプラス数千円程度と見込まれる。

2015/5/7

 兵庫県内の医療の最前線に迫る「ひょうごの医療」は、2009年の連載開始から44シリーズを数えた。今回から装いを新たに、診療に役立つ情報をよりタイムリーに取り上げる新シリーズを始めます。初回のテーマは「進化する診療」。

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