新ひょうごの医療

筋膜を切開し、背中から植皮した男性の右脚のすね=神戸新聞社
神戸市北区の男性(69)はあの時、同市東灘区魚崎北町の自宅にいた。木造2階建ての1階和室の布団の上で、突き上げる揺れにとっさに体を丸めた。足元の大きなタンスが倒れ、1階の天井が覆いかぶさる。激痛が走る両足首に乗ったタンスは、崩れた家屋の重みでビクともしなかった。
外から近所の人たちの声が聞こえた。「大丈夫だ。足を挟まれて動けない」。応じるだけの時間が続く。喉の渇きは増し、脈は速まった。「生きて出られるのか」。よぎる不安に「感じるのは生きている証拠」と自らに言い聞かせた。
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- シリーズ11 災害と疾病
2018/1/6~2018/1/27
約25万棟が全半壊し、死者6434人、重軽傷者4万3792人を出した阪神・淡路大震災。壊れた家屋から救出されながらも、命を落とした人がいた。避難所では、寒さと先の見えない暮らしで体調を崩した人も多い。あの日から間もなく23年。今月の「新・ひょうごの医療」シリーズ11は、震災が招いた病気やけがに焦点を当て、助かった命をつなぐための備えを考える。
