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地震免責条項が定められている火災保険の申し込みを受けた損害保険会社が、後に阪神・淡路大震災の火災で延焼被害を受けた神戸市の住民らに、地震保険について十分説明したかどうかが争われた訴訟の上告審判決が九日、最高裁第三小法廷で言い渡された。
住民らは地震保険に加入しておらず、説明不足で精神的損害を受けたとして、慰謝料を請求したが、藤田宙靖裁判長は「地震保険に加入するか否かの意思決定は財産的利益に関するもの」と指摘。「情報提供や説明に不十分、不適切な点があったとしても特段の事情がない限り、慰謝料請求はできない」との初判断を示した。
その上で、火災保険だけの契約だった住民十九人について、損保会社七社と一団体に計約千二百十五万円を支払うよう命じた二審大阪高裁判決を破棄した。被災住民が敗訴した二○○○年四月の一審神戸地裁判決が確定した。
判決理由で藤田裁判長は(1)住民は申込書の情報を基に地震保険の詳細な情報を求める十分な機会があった(2)損保側が地震保険に関して意図的に隠した事実はない-と判断。特段の事情があったとはいえないとした。
判決によると、十九人は大震災当日の一九九五年一月十七日午後二時ごろ、神戸市東灘区魚崎北町の靴店で発生し、八十五棟を焼失した火災で延焼被害を受けた。火災保険金の支払いを請求したが、損保会社は地震免責条項を理由に拒否した。
二○○一年十月の二審大阪高裁判決は「火災保険と同時に加入できる地震保険の十分な説明を受けておらず、自己決定権を侵害された」とし、損保側が上告していた。
原告側弁護団の亀井尚也代表の話
判決は紋切り型で答えてほしいことに答えてない。勧誘段階での問題性について、掘り下げた判断が欲しかった。二年をかけて最高裁がこの程度の形式的な判断しかしなかったことは極めて残念だ。