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兵庫県内で自宅で誰にもみとられずに亡くなった独居者が、二〇〇二年の一年間に少なくとも七百七十人に上り、九年前と比べ判明分では一・七倍に増えていたことが九日、分かった。うち一カ月以上たって見つかった人は四・四倍と急増。独居死は阪神・淡路大震災の仮設住宅や災害復興住宅で相次いだが、一般民家や被災地外を含め、都市部では日常化しつつあることが調査で裏付けられた。
神戸新聞社が、神戸市内(北、西区を除く)の検視を担当する兵庫県監察医務室と、そのほかの地域の各警察署に調査を依頼。五十二署のうち検視データが得られた三十一署分をまとめた。
〇二年の独居死者は七百七十人。うち二十八署では過去のデータも得られ、一九九三年の四百三十七人に対し、〇二年は七百三十五人だった。
発見までの時間は、〇二年の二十四署計六百二十一人のうち一週間以上が百十人(18%)、一カ月以上は三十一人(5%)と、九三年の同じ管内のデータと比べ、それぞれ二倍と四・四倍に。最長の神戸市長田区の五十代男性は、死後一年三カ月たって見つかった。
県監察医務室による担当区域では、〇二年で男性が62%。年代は六十五歳以上が63%、四、五十代も22%だった。死因は病死75%▽自殺13%▽不慮の事故5%▽飲酒関連の病死5%-と続いた。親類など遺体を引き取る人がいなかったのは、全体の一割だった。
同区域では、独居高齢者数が九五年から〇〇年にかけて一・六倍増加。行政や地域などの見守り対策が追いついてない現状が浮き彫りになった。
一方で、近隣の結び付きが強いとされる但馬、播磨地域などの郡部でも発見までの期間は短いものの、過疎化を背景に独居死がじわり増加。県内全体では、〇三年も十月末時点の判明分で七百人近くに達している。
さらに増える可能性 長崎靖・県監察医の話
感染症や呼吸器系の疾患など死因によっては具合が悪くなった時点で見つかっていれば、命を救えたとみられる。独居高齢者や近所付き合いを避ける人が増えており、独居死は今後さらに増える可能性がある。