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被災者追跡アンケート

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 ▼近畿大理工学部教授 安藤元夫氏
 被災地では、もともと住んでいた地域に、戻りたくても戻れない人が、まだ多く残されている。アンケート結果では、千歳地区にいた持ち家層のうち、「戻りたいが、断念した」という回答が17%もあった。
 持ち家層は、地域にこだわりがあり、この数字の持つ意味を重く受け止める必要がある。この人たちは、震災後、何らかの条件や支援が加わっていれば戻れたはずだ。
 もし、仮設住宅が居住地の近くに建っていたら、自分の土地に自力で仮設住宅を建てることに援助があったら、元の地域で暮らせた人がいただろう。また、借家層にとって「地域に戻る」ことは、一層ハードルが高かったことを、数字があらためて示している。
 持ち家・借家層の多くが戻った地区もあった。尼崎市の築地地区では、区画整理と、長屋などを買収して住宅を建設する住宅改良事業を併用し成果があった。住民合意を待って都市計画決定したことも大きく、学ぶべきことが多い。
 一方、アンケート結果からは、地域格差が解消されていないことも読み取れる。深江地区がある神戸・東部や阪神間に比べ、長田区や千歳地区などの西部は、空き地が広がる光景からも、復興が進んでいないことが分かる。震災前から都市ストックや個人の資金力などに差があり、十年間、格差は貫かれていった。
 では、もう少し時間がたてば、西部の空き地が埋まるほど家が建つかについては、今の状況では疑問がある。大災害の後、どうしたら被災者が戻って来られるのか。自然災害が相次ぐ中、われわれには、阪神・淡路大震災がもたらした深い傷跡から、粘り強く教訓をくみとっていく責務がある。(談)

2005/1/11

 

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