再開発ビルが林立する新長田駅南地区(神戸市長田区)。南北を大正筋商店街が貫く。
「再開発への期待は大きかった。復興を浮上のきっかけにしたかった」。元商店街理事長の上田司郎さん(80)は振り返る。
一帯は高度経済成長期、神戸西部の商都として栄えたが、阪神・淡路大震災の前は老朽化が進み、集客の核だった「神戸デパート」内の大手スーパーが撤退を決めていた。
再開発の機運が高まる中、震災が発生。復興再開発事業の導入が決まる。上田さんらは共同仮設店舗「パラール」を開業し、再開発ビルの完成を待った。
2004年、大正筋商店街は復活する。一帯の商業区画は計9棟の地下1階~地上2階計3万平方メートルを超す。だが、以前のにぎわいは戻らなかった。
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商店街がある「久二塚(くにづか)5・6」地区の人口は、震災前の1751人から500人近く増加。新長田の再開発エリア全体では、1300人以上増えた。それなのに、商業低迷に歯止めがかからない。
人口を押し上げたのは大量に供給されたマンションの入居者だ。一方で、長屋などに暮らした借家人の多くは戻らず、住民は大きく入れ替わった。
地区周辺への波及も期待されたが、近隣の東西1キロ、以南700メートル圏では、震災前比で4千人減った。高齢の衣料店主は「新たな客は増えず、なじみの客も消えていった」と嘆く。昨年1月には、新長田駅前の大丸新長田店が撤退した。「周辺人口の減少」が大きな理由だった。
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都市計画決定の直後から、「身の丈を超えた巨大開発」と批判を浴び続けた再開発事業は、商業低迷も重なり「復興災害」との声も上がる。神戸市も打開策を練るが、出口は見えない。
既存店舗の再配置や新店舗誘致による活性化策も検討されるが、ある商店主は言った。「長田の良さを取り戻し、周辺も一丸とならない限り、大正筋の真の復活はあり得ない」
(森本尚樹)
2014/6/22