静まりかえる中庭。人影はまばらだ。神戸市中央区脇浜海岸通3、HAT神戸脇の浜団地。兵庫県営、市営、UR都市機構(旧公団)の計18棟に3千人近くが暮らす。
団地中央部に6番館がある。1、2階に介護老人福祉施設が入る9階建ての市営復興住宅で、高齢化率は85%に達する。多くが高齢者向けに緊急通報設備などがあるシルバーハイツの住民だ。
男性(74)が嘆く。
「この町の愛称は、HAT(ハッピー・アクティブ・タウン)だけど、年寄りが年寄りを見守っている。後を継ぐ世代がおらん」
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一帯は大正時代にできた製鉄所の跡地で、阪神・淡路大震災後、神戸市が東部新都心として再整備した。団地には1999年以降、仮設住宅などから被災者が移り住んだ。
人口は横ばいだが、入れ替わりは進んだ。市営では、当初からの入居者は6割に減少。しかし、団地全体の高齢化率は2000年の31%から、10年には40%に上昇した。
県営に住む大平ゆう子さん(73)は「若い人も増えたけど、圧倒的にお年寄り。空きができても、またお年寄りが入ってくる」と話す。「単身者は60歳以上や障害者に限る」などとする公営住宅の入居要件が、もともと高い高齢化率を押し上げる。
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5月、地域の自治会役員らでつくる「脇の浜ふれあいのまちづくり協議会」の有志が、NPO法人「よろず相談室」とともに、明舞(めいまい)団地(明石市、神戸市垂水区)を視察した。
明舞は、県が音頭を取り、国の認定を受けて県営住宅に単身学生の入居を可能にした。5室に5人が住み、自治会に参加して団地の活性化に取り組む。
同協議会の塩月時佳(ときよし)委員長(79)は「脇の浜でも、学生が住民となって、見守り活動などに参加してもらえれば」と期待を寄せる。
来年1月で震災から20年。超高齢化の最前線で、次代を見据えた模索が続く。
(上田勇紀)
=おわり=
2014/6/27