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泥かきの前に、家の中を手分けして片付ける生徒たち=丹波市市島町
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泥かきの前に、家の中を手分けして片付ける生徒たち=丹波市市島町

泥かきの前に、家の中を手分けして片付ける生徒たち=丹波市市島町

泥かきの前に、家の中を手分けして片付ける生徒たち=丹波市市島町

 ボキッ。泥の中の何かに引っかかり、スコップの柄が真っ二つに折れた。

 「何これヤバイ」「泥、重すぎ」

 夏休み最後の週末、兵庫県立舞子高校環境防災科(環防(カンボー))の生徒たちが、豪雨災害に見舞われた丹波市市島町に駆け付けた。先輩らは全国の被災地でボランティアを重ねてきたが、現役の11~13期生には、初めての現場だ。

 「そろそろ休憩!」。泥に埋まった家に、南木颯人(なんき・はやと=3年=の太い声が響いた。普段から救急セットを持ち歩く環防の申し子のような男。豪雨直後の8月19日には個人的に、ひょうごボランタリープラザの第1陣に参加した。この日は、リーダーとして仲間をまとめた。

 泥は思っていた以上に重かった。災害がいかに人々を傷つけたか、ここに来なければ分からない。

 「地元の人に『ありがとう』と言われて泣きそうになった」と川嶺桃香(2年)。どんな支援が必要だろう。汗まみれの体を動かし、自分なりの答えを探る。

    ◇

 「お前らさっきから返事くらいせえや!」

 夏真っ盛りの8月上旬。垂水消防署(神戸市垂水区)に消防士の怒号が響いた。相手は体操服姿の男子高校生たち。「遊びちゃうぞ。訓練やっとんや」

 環防は毎年この時期、同署で3日間の訓練に挑む。自然災害などの最前線で活動する消防の仕事に触れ、進路選択に生かすためだ。環防でも屈指の人気を誇る行事で、これまで30人以上の卒業生が消防の道に進んでいる。

 今年の参加者は1、2年生計14人。普通科の生徒もちらほら交じる。この緊迫した場に、ひじで互いの脇腹をつつき合ってはくすくす笑う、やけに緊張感のない2人がいた。

 2人は野球部のチームメートでもある。

 「(中学の)トライやる・ウィークでも来たけど、内容同じですもん」。余裕っすよ、と言わんばかり。だが消防士が激高した2日目から、訓練は難度を上げた。

 注意深い作業が求められる三連はしごでの救出訓練。気を抜くとどやされる。「今日はちょい厳しかったっすね…」。口数が少なくなり、顔が引き締まっていく。

 強い刺激で生徒は発奮したり、無力感にとらわれたり。「本物」の経験が、環防を鍛え上げる。

=敬称略=

(黒川裕生)

〈メモ〉

 卒業後の進路 推薦やAO入試で大半の生徒が大学に進学する一方、これまで30人以上の卒業生が消防士として活躍する。警察官や自衛官を志す生徒も多い。国際支援や防災関係のNPOに携わるケースも。

2014/9/7
 

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