垂水マンスリー
三角形の厚揚げにがんもどき…。店の前にずらっと並ぶ田仲盛秀さん(68)=神戸市垂水区=自慢の豆腐は、どれも食欲をそそる。店の前を通る子どもたちに「お帰り」と声を掛けるのも日常の光景だ。
鹿児島県沖永良部島で生まれた。12人きょうだいの六男で、どちらかというと引っ込み思案な性格だった。高度成長まっただ中の「金の卵」時代、名古屋の定時制高校に通い、その後京都で豆腐の修業を積んだ。
塩屋で「田仲とうふ店」を構えたのは20代前半のころ。「豆腐の仕込みは朝早い。最初は大変だったけど、故郷から呼び寄せた両親や妹たちを支えようと必死だった」と振り返る。
なじみの豆腐だけでなく、絹あげ豆腐や、小学生のアイデアを商品化した「とうふスティック」も人気。沖縄の郷土料理で知られる、柔らかい「ゆし豆腐」も並ぶ。近くのカレー店には、田仲さんの豆腐を使った「コラボカレー」も。「夕方来るから取り置きしてて~」とだけ言って店の前を小走りするおばちゃんの姿も珍しくない。
田仲さんの豆腐は垂水区内の12小学校にも卸される。多い時は400丁以上。職業体験に来た中学生には「サッカー日本代表の香川真司選手(ドルトムント、同区出身)もおっちゃんの豆腐食べて育ったんやで」と胸を張る。かつては元タカラジェンヌの実家にも頻繁に配達していたという。
塩屋に住んで40年以上。地区の青少年育成委員会の支部長を務め、七夕飾りの準備や子ども食堂の手伝いなど、地域行事には率先して顔を出す。地区の児童養護施設のボランティアで知り合った子が成長し、最近は地域のイベントを手伝ってくれるようにもなった。
「地域の集まりやらで出掛けるから、仕込みが終わって昼過ぎまでは店から姿を消すのよ」と奥さんは笑うが、「子どもたちが『塩屋で育って良かった』と思ってもらえるまちにしたいね」と田仲さん。トレードマークのバンダナを締め、ニコッと目を細めた。
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ブロロロロ-。荷台に酒瓶を積んだ二輪車がエンジンを吹かし、急勾配で狭い塩屋のまちを駆け抜ける。
1964年から54年続く、貴伝名酒米店(同区塩屋町4)。現在は主に電話による配達販売だが、酒や調味料など品ぞろえは200種類以上と豊富だ。
2代目店主の貴伝名孝司さん(55)は、このまちで育ち、約35年前に父から店を受け継いだ。昔なじみの客も多く、鍵を預かって酒を配達したり、高齢の客に「電球を取り換えてほしい」などと相談されたりもする。まち中を走り回り、地域住民や店主らと会話をすることから、ついた名前は「塩屋の情報通」だ。
貴伝名さんは「都会に近いのに自然豊かな立地や、地域住民が声を掛け合って暮らす様子をすてきだと言ってくれる人がいる。自分には当たり前の景色だったけれど、地元以外の人が入ることでこの地域の良さを再発見できた」と笑顔を見せた。(久保田麻依子、吉田みなみ)
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