垂水マンスリー
30年前の神戸に米カリフォルニアをほうふつとさせる“西海岸”があったことをご存じだろうか。1980年代初頭、舞子海岸(神戸市垂水区)に建てられた1軒のレストランをはじめ、マリンビューの国道2号沿いにはハイセンスな飲食店や雑貨店が次々と開店。関西の若者にとってドライブデートの聖地となった。レストランの名は「ウェザーリポート」。今はなき面影を訪ね、当時の関係者に話を聞いた。(上杉順子)
同店があったのはJR垂水駅と舞子駅のほぼ中間、国道2号の海側。現在はコンビニエンスストアやカフェなど全国チェーンのロードサイド店が立ち並ぶ辺りだ。82年ごろオープンし、真っ白なコンテナハウスやウッドデッキが評判を呼んだ。その後の改装などを経て、明石海峡大橋建設に伴う舞子海岸の埋め立てなどで98年前後に閉店したようだ。
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「垂水マンスリー 南北彩々」に届いた情報で最も多かったのがウェザーリポート。往時をしのぶたくさんの声が寄せられた。まずは店をよく利用していた、かつての若者の声を紹介しよう。
明石市の会社員男性(57)。開店時は大学生で、就職して神戸を離れた85年ごろまで、愛車を駆ってよく訪れた。
基本は女の子と、時には一人で。週末は駐車待ちの他府県ナンバーで渋滞するほど繁盛していたが、近くの明石に住んでいたので平日昼にふらっと立ち寄ることが多かった。ウッドデッキのテラス席でサンドイッチを軽くつまみ、1時間ほど海を眺めた。「BGMは?」の問いに「当時はやりの山下達郎とか流れていたような気がするけど…。1番はもちろん波の音!!」
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もう一人、神戸市西区の会社員男性(47)は93~95年ごろ、学生アルバイトでウエーターをしていた。初日は洗い場に入り、洗っても洗ってもコップが減らないほど大盛況だったことが記憶に残るという。
当時の建物は木造2階建て。階段を上った先に待合があり、また1階に下りて食事を楽しむ形式だった。海を望むカウンターは、店員の目が行き届かず「2人の世界」に浸れる両端が人気を集めたという。広い駐車場だけ利用して入店せず、車から海を眺めるアベックもいたが、それをさりげなく注意して回ったのも今となってはいい思い出だ。「若者もみんな車を持っていた。時代に合った店だったんでしょうね」
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最後につてをたどり、同店創業に関わった人に会うことができた。同市東灘区の志賀康三さん(67)。現在は広告会社を営む。
志賀さんによると、コンテナハウスの販売を手掛けていた会社が商品のプロモーションを兼ねて開いたのが同店。甲南学園の先輩である経営者に誘われ、オープンからの数年間、事業に携わった。土地の所有者も同窓で「海から近すぎてビルは建てられないが、コンテナならちょうどいい」と話がまとまったという。
長さ約7・3メートルのコンテナ6基を連結し、内外装は白と青を基調に米西海岸のイメージでまとめた。店名は英語の「天気予報」と、当時活躍したアメリカの同名音楽グループから。ドレスコードはなく料理も手頃な価格で、開店当初から20代を中心に人気を集めた。約2年後には芦屋・奥池にも進出した。
「車の助手席に彼女を乗せ、カセットテープで音楽を聴きながら来る店でしたね」と志賀さん。オープン時の国道2号沿いは須磨-明石間にほとんど店舗がなかったが、数年でにぎやかになった。「阪神間のトレンドをつくれたのでは。みんなが西神戸の新たな可能性に気付いたと思う」と振り返る。(上杉順子)
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