審査委員長講評
社会を見る目を養う「新聞」

兵庫県ＮＩＥ推進協議会　竹内弘明　会長

今回の「ひょうご新聞感想文コンクール」には総数５４８８点の応募がありました。応募してくださった多くの児童・生徒のみなさんには心よりお礼申し上げます。ありがとうございました。

そして、どの作品もとても素晴らしく心に響くものがありました。取り上げている題材はさまざまで、夏休み期間中の新聞記事からの感想文が多く、高校野球や終戦といったものも多くありました。また今の社会問題が多く取り上げられていました。国際社会の戦争や難民、平和の問題、人権や差別、ジェンダーや男女共同参画、環境問題やＳＤＧｓ、多様性や生成ＡＩ、難病や地域の課題などなど、多くの児童・生徒のみなさんがこうした社会の問題に真摯（しんし）に向き合ってくださっていることに頼もしさを覚えます。

新聞を読むことは社会を見る目を養うことです。新聞を読むことで大人になって社会に出たときに、膨大な情報社会の中で、物事を正しく理解し、正しく判断することができる力も身につきます。豊かな人生を送るためにも、ぜひこれからも新聞を読んで考えることを続けてほしいと願っています。

部門ごとに感想を述べさせていただきます。

【Ａ部門】

小学校低学年ですが、家族と語り合いながら平和や人権など重たい社会問題についてもしっかりと自分の意見を持っていますし、自分の体験を重ねることで自身の問題としてとらえています。生き物を擬人化してその気持ちを推し量る作品などはＡ部門ならではの視点です。

【Ｂ部門】

小学校中学年になると、自分事としてとらえる作品が多くあったように思います。社会問題も多くありますが、自分の生活に近い問題を取り上げ、自身の経験を重ねて文章を展開しています。身近な問題だけによりリアルで、その内容も納得させられるものが多くありました。

【Ｃ部門】

小学校高学年になると自分の考えをしっかりと持った力強い作品が並びます。感銘を受ける作品が多く、小学生ながら社会問題を真摯に受け止めて自身の考えを深めています。新聞記事が子どもたちの生き方にも影響を与えるのだと考えさせられました。

【Ｄ部門】

中学生になると新聞の題材選びの段階から、社会性のある記事を選んで誠実に感想を書いている作品が多く、社会問題の解決に向けて自分が行動するという強いメッセージを感じます。身近な問題も深く掘り下げて自身の考えを述べていて、奥が深いと感じました。

【Ｅ部門】

さすがに高校生になると鋭い視点で社会問題に切り込んできます。自身も多くの体験をしてきているので、社会の問題をまさに自分事としてとらえており、テーマ選びの段階から社会の課題とマッチしているものが多く、独自の視点や体験に裏づけられた意見はさすがに高校生だと思いました。

こうして小学生から高校生までの感想文を読ませていただきますと、子どもたちの成長の過程が見えるように思います。小さい頃から社会の出来事に関心を持ち、課題に真摯に向き合い、自分事として考えることによって、やがてこの子どもたちが大人になり、よりよい社会をつくっていってくれるのかと思うと、とても頼もしく思うとともに楽しみでもあります。

このような素晴らしいコンクールを推進してくださいました、保護者の皆さま、先生方、神戸新聞社様、そして関係の皆さまに心より感謝申し上げます。ありがとうございました。

このコンクールがますます充実しますよう、どうぞよろしくお願いいたします。