兵庫県豊岡市の元地域おこし協力隊員で、同市竹野地域で「移動スーパー123」を運行し、高齢者らに親しまれた谷川いづみさんが2025年度、心豊かに暮らせる地域社会づくりへの貢献をたたえる生活協同組合コープこうべ(神戸市東灘区)の「虹の賞」奨励賞に選ばれた。谷川さんは受賞報告前の25年10月、脳出血のため46歳で急逝した。単身で愛知県から豊岡市に移り住み、地域に尽くした歩みをたどる。(阿部江利)
■利用者の見守りにも尽力
谷川さんは同市竹野町二連原地区に移住し、18年7月~21年6月に協力隊員を務めた。コメやピーマン、山菜などを育てて農業を学び、そば打ちやたけのこ掘りといった地域の交流イベントを手がけた。住民は「地域に欠かせない存在だった」と声をそろえる。
任期中、谷川さんは買い物に不自由する高齢者らの姿をみて「手に取って選ぶ買い物を楽しんでほしい」と一念発起し、四輪駆動の移動販売車を購入。23年3月、巡回販売を始めた。
123は月~木曜の週1回、「三百六十五歩のマーチ」の音楽を響かせて巡回した。早朝に同市の食品スーパーで仕入れし、月曜は同市竹野地域南東の谷筋、火曜は浜方面と行き先を変え、毎週40カ所近くを巡った。日用品などのニーズにも応え、暗くなるまで走り回った。
◆
同市竹野地域の女性(68)は50年前に病気で歩けなくなり、通院など以外の時間はほぼ自室で過ごす。それでも移動販売が始まると、晴れた日は自宅前に止まった販売車のもとに車いすで向かい、雨の日は自宅ベランダ横に車を着けてもらってベッド越しに買い物を楽しんだ。
いつも体調を気遣ってくれる谷川さんを娘のように思っていた。「あなたのおかげで竹野の年寄りがどれだけ助かったか」
123は毎週木曜、竹野南地区の住民が集う同市竹野町森本の喫茶よつば前でも営業した。毎週商品の余剰が出たが、谷川さんが足が早いものをLINE(ライン)で知らせ、住民有志が買い支えた。
喫茶を運営するNPO法人「わいわいみ・な・み」の女性(55)は「地域のために頑張ってくれるいづみちゃんをみんなが応援していた。住民と思いをキャッチボールしながら、彼女なりの支援の形を作っていた」とする。赤字を心配して止める声もあったが「覚悟がすごかった。いなくなったことを今もみんなが悲しんでいる」。
◆
谷川さんの虹の賞は、豊岡市社会福祉協議会が推薦した。同市社協竹野支所の渋谷将司支所長(37)によると毎週水曜、同支所前で福祉施設の利用者らに販売した後、同支所にも足を運び、訪問した高齢者らの情報を伝えてくれていた。
当初は5~10分程度だったが、24年からは谷川さんと市社協の意見交換会に発展した。ケアマネジャーらも交え「減っていないのに同じ商品ばかり購入している」といった心配ごとを共有した。「移動販売しながら高齢者に寄り添い、見守りや声かけをしたいとの思いを持たれていた」
谷川さんの父守一さん(76)によると、3人姉妹の次女で短大卒業後は愛知県で保育士として働いた。「昔からよう頑張る子でした」。自身も実家が農家で、農業の苦労を知る。協力隊員になる時も小さな体でできるのかと心配した。
移住後は守一さんもピーマンの植え付けを手伝い、移動販売車について回るなどした。「多くの人に良くしてもらい、本人がやりがいを持って取り組めたなら良かったと思う」。受賞は仏前に報告するという。

























