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秋田県から帰港した台船「あさひ」を前に、笑顔を見せる関勝社長=淡路市生穂新島
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秋田県から帰港した台船「あさひ」を前に、笑顔を見せる関勝社長=淡路市生穂新島
秋田港付近で進む工事。海上に風車の支柱が立ち始めている。手前のオレンジ色の船が「あさひ」=10月(関海事工業所提供)
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秋田港付近で進む工事。海上に風車の支柱が立ち始めている。手前のオレンジ色の船が「あさひ」=10月(関海事工業所提供)
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 エネルギー転換の最前線で、兵庫・淡路島の中小企業が奮闘した。舞台は秋田県で進む洋上風力発電の巨大プロジェクト。社員40人の関海事工業所(淡路市岩屋)が、大型風車33基分の海底ケーブルを設置した。社員らは今夏から4カ月半にわたり、船上で24時間態勢の作業を続けた。「失敗が許されない重圧と闘いながらの日々だった」と振り返る。(上田勇紀)

 1906(明治39)年創業。昭和初期から海底ケーブルに関わる。全国の離島へ電気や水を供給するための海底ケーブルを敷設したり、修理したりしている。

 参加したプロジェクトは、発電容量4・2メガワットの風車を秋田県の能代港付近に20基、秋田港付近に13基建設する計画。計約140メガワットで、一般家庭約13万世帯の消費電力をまかなう規模になる。大手商社などが設けた会社「秋田洋上風力発電」(秋田市)が進め、商業ベースでは国内初の大型洋上風力発電事業という。

 政府は、石炭などの化石燃料から、温室効果ガスを出さずに枯渇しない再生可能エネルギーへの転換を掲げる。洋上風力発電もその一つで、再エネ普及の鍵を握るとされる。

 プロジェクトで関海事は住友電気工業(大阪市)の下請けに入り、風車と風車や、風車と陸地をつなぐ海底ケーブルの敷設と埋設を担った。関勝社長(58)は、「失敗すると日本のエネルギーの方向性が変わってしまうとの思いで臨んだ」と話す。

 工事は今年6月半ばに始まった。淡路市の津名港から秋田入りした2台の台船「あさひ」と「あわじ」に、外部企業を含めて約80人が乗り込んだ。

 ケーブルは海に立てる風車と同じ33本ある。それぞれ長さ300メートル~4キロ。風車の支柱にケーブルをつないだ後、水中ロボットを綿密に操作して水深10~30メートルの海底に埋め込んでいく。社員らは現場で指示を出し、ロボットの操作もした。

 甲板で作業を指揮した関航主幹(31)は、「4カ月半という長い工期を国内で引き受けたのは初めてだった。海が荒れる冬の前に終わらせるため、遅れないよう緊張する作業が続いた。洋上風力は可能性が大きく、今後も増えていくのではないかと感じた」と話す。

 台船には「居住区」と呼ばれる設備があり、食卓や寝室、洗濯機などが入る。社員や外部企業の作業員らは寝食を共にしてチームワークを育んだ。

 入社2年目の佐々木沙奈さん(32)は「コックとのメニューや買い出しの調整が大変だった。工事が終わったとき、未来の子供たちのためになると思い、うるっときた」という。ベトナム出身の社員、グェン・マイン・カムさん(30)は「最初は船酔いが大変だったけど、だんだん慣れ、学ぶことが多かった」と話す。

 関海事の担当は11月上旬に完了した。現地では2022年末の商業運転開始を目指し、工事が続く。関社長は「携われて社員の誇りになった。地元の人たちにも知ってほしい」と、ほっとした表情で話した。

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