兵庫県南あわじ市は、観光客など向けの貸自転車事業へ、民間の参入を促す。同市志知鈩のバスターミナル「陸の港西淡」で２０１８年に始めたレンタサイクルが好調なため。「格安」設定だった料金を６月１日から一部値上げし、民間並みに近づける。利用者は負担増となるが、市は「民間レンタル業者が取り組みやすくする方が、地域の活性化につながると判断した」としている。（西竹唯太朗）

　陸の港西淡の貸自転車は、電動クロスバイク、クロスバイク、いわゆる「ママチャリ」にあたるシティサイクルの３種類で、計１５台ある。利用実績は、初年度の２８３台から毎年増えた。新型コロナウイルス禍でも好調を維持し、２１年度は１月末時点で事業を始めて以来最高の５６２台となった。

　昨年、市が利用者約２５０人を対象に実施したアンケートでは、９割以上が島外からの利用者だった。目的は観光が５１％、サイクリングが４２％だった。

　淡路島を自転車で一周する「アワイチ」の人気が高まる中、市も大鳴門橋（おおなるときょう）の自転車道構想の実現を目指すなど「サイクルツーリズム」に着目している。貸自転車事業へ、民間の参入を促してきたが、現在市内で営業する民間施設は２カ所にとどまる。市の料金が安すぎて、二の足を踏む業者もあったという。

　陸の港西淡のレンタサイクルは、６月からの値上げで、電動クロスバイクが１日１５００円から３千円に、クロスバイクが同５００円から１５００円になる。いずれも２日目以降は半額。シティサイクルは同５００円を据え置く。

　市商工観光課によると、島内で他２市を含めた民間事業者の１日使用料の平均は、電動クロスバイクが約４６００円、クロスバイクが約２５００円。「これまでの市の料金設定は、新事業として一定の利用者数を確保し、知名度を高める目的だった」と同課。値上げによって市事業の利用者が減る可能性がある一方、「一つの施設で対応できる客数は限られる。新規参入が増えれば利用者の分母が大きくなり、波及効果も高まる」と期待している。