「大きなキノコがあるので、取材に来てくれませんか」。高齢者が利用するデイサービスセンターありまふじ(兵庫県三田市志手原)から神戸新聞北摂総局に電話があった。日頃、ネタを探して地域を駆け回っている記者にとって、情報提供はありがたい。早速、取材に向かうと、そこにはかさの直径約30センチの巨大キノコ。調べてみると、なんだか珍しいもののようで…。(門田晋一)
■毒キノコ?
「これです」。1日、デイサービスセンターありまふじを訪ねると、女性職員が白い2本のキノコを見せてくれた。見たこともない大きさ。香りはエノキダケに似ている。かさや柄は粘液に覆われ、少し不気味だ。毒キノコかもしれない。
見つけたのは利用者の岡田勲さん(73)。生まれ育った同市北部の山中で、毎年秋になると何十本も生える巨大キノコが長年気になっていたという。
どうしても間近で見てみたいが、体が不自由で山に入れない。そこで、送迎車のドライバー西谷幹彦さん(66)に場所を伝え、2本だけ摘み取ってもらったそうだ。「名前が分かったら教えてください」。岡田さんと西谷さんに頼まれた。
■「珍しいですよ」
県立人と自然の博物館(同市弥生が丘)でキノコを研究している秋山弘之主任研究員(62)に写真を送り、電話で話を聞いた。
「へー、これは珍しいですよ」と秋山さん。「モミタケ」といい、モミの木の周りに育つという。三田で20年以上キノコを採集している秋山さんも見たことがなく、予想に反して食べられるという。
「肉厚だからバターソテーがおいしいかもしれませんね」と教えてくれたが、一緒に食べることを提案すると「実際に食べたことはないし…」と断られた。
■「おいしかった」
後日、西谷さんと一緒に山に入った。沢の近くのモミの下に、かさの直径20センチほどの少し小さいモミタケが2本生えていた。
食べてみたいと思ったが言い出せず、2本のモミタケは西谷さんが持ち帰った。数日後、西谷さんから電話があった。天ぷらのほか焼いて食べたという。「おいしかったよ。くせの少ないシイタケみたいで。香りもいいし」。あー、うらやましい。
秋山さんは資料用に数本を採集した。モミタケを標本にし、人と自然の博物館で展示するという。