兵庫のこれからの4年間を託すリーダー選びが始まった。県内の人口は減り続け、暮らしを取り巻く課題も幅広い。知事選には4人が名乗りを上げ、選択肢がそろった。立候補者に何を期待し、どんな基準で1票を投じるのか。論戦に耳を澄ます有権者に聞いた。
■望む施策■医療・福祉子育て支援注目
川西市内で桜の保全に取り組む住民グループの代表西沢孟治(たけじ)さん(74)は、医療・福祉分野の訴えに注目する。「高齢者の心身の健康を保つことが、医療費の抑制につながる」と考えるからだ。グループ約60人の平均年齢は70歳超。週1日は猪名川の斜面を歩き、地域の子どもと交流することが健康維持の鍵という。活動は県の助成金にも支えられ、「地道に支援してくれる県政」を求める。
「給食に地元産の食材を取り入れる地産地消や小学生の英語教育など、世界で活躍できる人材を育てる施策に期待したい」とは、小学生と幼稚園児の子ども3人を育てる神戸市西区の女性(40)。教育費や医療費など子育て世代の負担は大きい。「独自の施策に取り組む市町は増えているが、暮らしの格差の広がりが教育にも影響していると感じる。全体的な底上げが必要ではないか」
■選択の基準■行動、実現、発信力を重視
県知事選に4人が立候補するのは実に27年ぶり。
選択のポイントを「経験と実績、発言や行動の安定感」とするのは、姫路酒造組合理事長で、田中酒造場(姫路市)の田中康博社長(64)。国の動向をいち早くつかみ、県の要望を確実に伝えるため「国とのパイプの太さも見極めたい」と言う。「県民に夢を語るのも大事だが、肝心なのは行動に移し、実現できるかどうか。当選回数や年齢では判断しない」
県内を一度も離れたことがないという神戸市灘区の主婦(69)は「発信力」を重視する。「素晴らしい県だと思ってきたが、最近は『兵庫』と言われてすぐにイメージできるものがない」と指摘。「新しい感性で兵庫の良さをアピールしてくれる候補に投票したい」と話した。
■参考にする情報■ネットやSNS、街頭演説
舌戦は17日間。各候補者はあの手この手で支持を呼び掛ける。
加古川市のパートの女性(50)は、インターネットでの情報収集が最も手軽だと思う。候補者のホームページや会員制交流サイト(SNS)で「街頭演説の動画も見られるし、書き込まれた文章などから立候補者の人となりも分かる」。一方で「ネット情報だけを参考にするわけではない。幅広い世代が接しやすく、候補者と有権者が直接意見を交わせるような場も設けて」と注文する。
街頭で候補者の演説に耳を傾けた神戸市中央区の会社員の男性(66)は「やはり直接声を聞いてみたいと思っていた。どんな口ぶりで、どんな主張をしているかに興味がある」と強調。「若い有権者にも関心を持ってもらえる工夫が必要だ。難しい言葉ではなく、分かりやすい言葉で語ってほしい」と訴えた。