衆院選2017
10月10日公示 10月22日投開票
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 第1次を含めると2千日を超えた安倍政権。また巡ってきた政権選択の機会を前に、いくつかのテーマでその決算を考えてみたい。まずは、看板の経済政策「アベノミクス」。3年前の前回衆院選で安倍晋三首相は「景気回復、この道しかない」と言い切った。今、戦後2番目の長さで景気拡大が続いているという。その実感、ありますか-。

   ■繁華街

 衆院選が公示された10日の午後8時、神戸・三宮の東門街。通りに並ぶ客引きは、どこか所在なさげだ。

 「客より客引きが多いくらい。神戸が田舎になったんやろな」。東門街でケーキ店を営む男性(66)がため息をつく。

 かつては、日付が変わってからが、書き入れ時だった。企業が東門街の飲食店を接待に使い、土産用ケーキも飛ぶように売れた。そのにぎわいは阪神・淡路大震災後、消えたままだ。

 安倍政権は景気対策で2013年度、企業が交際費を使いやすいよう税制改正を行った。交際費総額は4年連続で増えたというが、店の売り上げは横ばいのまま。「どこで使(つこ)うてんのやろ。東京だけちゃう?」

   ■観光地

 姫路市内は平日でも外国人観光客が行き交う。目当ては、平成の大修理を終えた世界文化遺産・姫路城。

 地元商店街で民芸品店を営む男性(74)は「城から遠いけど、おかげで店をやっていける」。売れ筋は、侍や忍者、漢字をあしらった商品。「もう歳やから、いまさら英語を勉強しようとは思わんけど」と笑う。

 日本銀行の金融緩和がもたらした円安。安倍政権は円安を追い風に訪日客を増やす目標を掲げ、観光地で外国人頼みが進む。ただ、いずれは頭打ちになる。

 老舗百貨店ヤマトヤシキ(姫路市)は今夏、免税店大手ラオックスから出資を受けた。城近くの土産物店では客の約8割が外国人。店員(56)は「今年に入って大修理効果が薄れ、日本人が減った。外国人向けに品ぞろえを変えている最中」とつぶやいた。

   ■家計

 「収入は増えないし、油や調味料は高くなるし…」。神戸市長田区の主婦(53)は、スーパーのチラシやネット通販を見比べ、少しでも安い店を探す。アベノミクスは富裕層向けの政策としか感じない。「手堅く定期預金をしたくても、銀行の金利は“ゼロ”。どうしようもない」とこぼす。

 一方、景気拡大を実感できている人もいる。メーク関連業を営む夫(38)と長男(3)と暮らす芦屋市の主婦(30)は「夫の会社の業績は好調。女性が自分磨きのために使えるお金が増えているんだと思う」。年1回だった家族での海外旅行は、ここ2年ほど回数が増えたという。

   ■投資

 「4倍ぐらいになった」。西宮市の男性会社員(41)は、さらりと株取引の成果を口にした。会社勤めの傍ら、03年に元手700万円で株を始めた。08年にリーマン・ショックで株が暴落。民主党政権で戻ることはなかったが、アベノミクスが株価の停滞を吹き飛ばし、ほぼ右肩上がりを続けた。日経平均株価の終値は10日、6営業日連続で今年の最高値を更新した。

 ただ、「アベノミクスの恩恵を感じるのは株価だけ」と男性。この間、会社の給料はそれほど上がらなかった。株の稼ぎは手堅く貯蓄に回す。「将来、年金もどうなるか分からない。投資は自己防衛のためですよ」。そう言って笑った。(段 貴則、田中陽一)

 【アベノミクス】デフレ脱却と日本経済の再生を目指す安倍政権の経済政策。金融緩和で流通するお金の量を増やす大胆な金融政策▽政府自ら需要を生み出す機動的な財政政策▽規制緩和などにより民間投資を促す成長戦略-からなる「三本の矢」が柱。2012年12月に始まった。金融緩和で大幅な円安となり、当初は輸出企業の業績が回復。日経平均株価も上昇した。ただ、成長戦略の行き詰まりなど「限界」が指摘されている。

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