日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発した小型探査機「SLIM(スリム)」が、月面に着陸した。鹿児島県・種子島宇宙センターから国産のH2Aロケット47号機で打ち上げ、約4カ月かけて燃料消費の少ない軌道を飛行し、最終降下では時速6400キロから強い減速をして難しい軟着陸を成功させた。

 月面着陸は旧ソ連、米国、中国、インドに続く5カ国目で、宇宙開発の歴史に刻まれる日本初の快挙である。月はもとより将来の火星探査などに向けて大きな意味を持つ。

 今回の主目的の一つは、狙った場所の100メートル以内に降りる世界初の「ピンポイント着陸」だった。JAXAによると、飛行機の数倍の速度で北海道上空を通過した機体を、20分後に甲子園球場の中に降ろすのに匹敵する挑戦だったという。

 そのために、飛行中に撮影するクレーターや地形の画像と月面地図を比較する画像照合航法を使った。ピンポイント着陸は月面での水資源の探査に役立つ。水が手に入れば月での長期滞在の実現も近づく。着陸精度が想定通りかの判断は約1カ月かかるが、日本独自の航法の有効性が実証されることを期待したい。

 ただ、着陸は全て計画通りにはいかなかった。機体の太陽電池パネルが発電せず、バッテリーが既に切れたため、予定していた鉱物調査などに影響が出た。鉱物を分析すれば、地球から月が分かれたかどうかなど、月の起源が分かる可能性があっただけに残念だ。JAXAも重く受け止め、着陸を「ぎりぎり合格の60点」と自己評価した。

 着陸は日本の技術の高さとともに、課題も浮き彫りにした。太陽電池はまだ動く余地が残されているものの、不具合があったのなら今後の技術開発に生かすことこそが重要だ。一喜一憂せず、原因の検証に全力を尽くしてもらいたい。

 一方、スリムは着陸直前、二つの小型ロボットの分離に成功した。一つは、タカラトミーなどが玩具の技術を活用した「SORA-Q(ソラキュー)」だ。野球ボールほどの大きさで、月面を走り撮影データを地球に送る。宇宙への夢をかきたてるような成果を楽しみに待ちたい。

 米国主導の国際月探査「アルテミス計画」では2026年からの有人着陸を目指し、日本人飛行士も着陸する方向で調整している。これに対し、中国やロシアも月探査の主導権を握ろうと躍起になっている。

 宇宙開発は、人類全体に寄与すべきものだ。軍事利用が望ましくないのは言うまでもない。各国の思惑を持ち込んで競争に拍車をかけるのではなく、国際協力や協調を進めなければならない。