有馬温泉の老舗旅館、御所坊(神戸市北区)の金井一篤社長(45)が神戸新聞社のインタビューに応じ、宿泊客の食事場所をレストランから客室に戻す方針を明らかにした。インバウンド(訪日客)が宿泊客の6割を占める中、「旅館の個性を出すために必要」と判断した。年内にも一部の客室で食事の提供を始める。金井氏は昨年11月、父の啓修氏に代わって社長に就いた。
同社は1980年代から食事をレストランで提供してきた。客室にベッドを置くなどのサービス改善と合わせ、当時は集客増につながっていた。
近年は海外の富裕層が増加。有馬の歴史や文化を軸にして同社のブランドづくりを進めた金井氏は「旅館の個性が訪日客に刺さった」と手応えを感じる。
さらに個性を磨くには「快適性を維持しながら、旅館の原点に戻る必要がある」と金井氏。客室での食事提供はその第一歩と位置付ける。「社員教育を進め、食事やサービスを通じて滞在中に歴史や文化を感じられるようにする」と意欲を見せた。
一方、宿泊業界では人手不足の状態が続いている。金井氏は「サービスを上げるには従業員の給料アップが必要」との認識を示し、「訪日客は新たな体験など、価値に見合った高価格なら喜んで受け入れてくれる。だからこそ、飛行機で数時間かけても行きたいと思えるサービスを作り上げる」と力を込めた。
歩いて楽しい街にしようと、同社はこれまで「有馬玩具博物館」やカフェの運営を通じ、有馬温泉全体の魅力向上を意識してきた。今後は「地域の祭りに神戸の他の地域を巻き込むなど、有馬の風情や面白さを発信したい」と語った。
今月18日に国際チャーター便の就航から1年となった神戸空港にも期待する。「春節(旧正月)の大型連休には、家族旅行に有馬温泉を組み込んでもらい、繰り返しお越しいただければ」と、2030年に予定される国際定期便の就航なども見据えた。(荻野俊太郎)
【かない・かずしげ】神戸大工学部卒。05年いちよし経済研究所。13年御所坊グループで「有馬山叢 御所別墅」の運営会社御湯所社長、25年11月から御所坊社長。神戸市北区出身。























