国債頼みの財政はいつまでも持続できるのか。そんな疑問を抱かざるを得ない。高市早苗首相は財政健全化に関連し、基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化を達成する目標を、従来の単年度から複数年度に切り替える意向を示した。
基礎的財政収支とは、税収と政策支出の差し引きを指す。黒字なら国債の発行を抑えられるが、赤字なら増える。黒字化は、1千兆円を超す巨額の国債を減らすためのあくまで一歩に過ぎない。
歴代政権は目標を実現できず、先送りを重ねてきた。それでも単年度の目標は維持し、国債を減らす姿勢はアピールし続けた。目標に幅を持たせる方針変更は、財政運営の「歯止め」を緩め、健全化を後退させたと受け取られても仕方がない。
首相は就任以来、「責任ある積極財政」の旗印を掲げる。その責任は積極財政のメリットを享受できる今の国民にだけでなく、巨額の国債を背負う次代の国民に対しても、同じように果たす必要がある。
ガソリン税の暫定税率廃止や光熱費補助、「年収103万円の壁」の引き上げなど、高市政権は野党の要求も取り入れた政策を次々と軌道に乗せ、2025年度補正予算案に計上した。しかし必要な財源の議論は詰め切れておらず、大半は国債の追加発行で賄う。要求の実現ありきで突っ走った感は否めない。
十分な財源を確保できずに国債を充てても、経済が成長すれば税収は増える。それが首相の唱える「責任ある積極財政」なのだろう。
国債の大半は国内の金融機関などが買っており、最後は日銀が引き受ける。だからいくら国債を発行しても、日本財政は破綻しないとの考え方が自民党内だけでなく国民の間でも一定の広がりを見せている。
だが市場の反応は異なる。長期金利の指標である新発10年債の利回りは一時約17年半ぶりの高水準に上昇し、円はドルやユーロに対し下落基調が続く。財政が悪化した国の通貨や国債は、破綻に陥らなくてもインフレで価値が薄れることへの懸念から手放されるのが経済の原則だ。「日本売り」の側面がある市場の警鐘から目をそらしてはならない。
物価高の要因には、円安による輸入品の値上がりが指摘される。政府が国債を追加発行する対策を重ねれば、円安や長期金利上昇が続いて物価高に歯止めがかからず、さらなる対応が避けられなくなる。
こうした悪循環を食い止めるためには、時間を要しても政府が愚直に財政再建に取り組むことが欠かせない。打ち出す政策に財源の裏付けが伴っているのか、与野党は財政への懸念に真摯(しんし)に向き合うべきだ。
























