選挙で支援しなかった報復に予算を削る。まるで国費を人質にとった脅しではないか。行政の公平性に対する不信を抱かせた責任は重い。
簗(やな)和生農相が、2月の衆院選で首長が対立候補を支援した地元の栃木県那須烏山市と那珂川町を名指しして道路予算を「大幅にカットした」と発言した問題で、国土交通省が調査結果を公表した。
国交省側は、簗氏から2市町の予算配分額に関する照会があったと認めた上で「働きかけや圧力はなかったと思う」と説明した。だが、照会があったのは2026年度の予算配分額が決まる前の2月中旬とされ、地元国会議員の意向が影響したと疑われても仕方がない時期だ。照会対象をこの2市町に限定したのも不自然で、疑念はむしろ深まった。
簗氏は2市町を含む衆院選栃木3区から自民党公認で立候補し、自民党が圧勝する中、無所属候補に敗れて比例復活で当選した。自身は否定するが、個人的な腹いせで予算配分に介入したとすれば許し難い。
実際、両市町の予算内示額は前年度より大幅に減る一方、簗氏を応援した首長の自治体の内示額は増えた。減らされたのは主に幹線道路やバイパスの整備に充てる交付金で、事業の進捗(しんちょく)を左右しかねない。国交省は減額の根拠や誰の判断だったかについても説明する必要がある。
問題発覚後の対応がさらに不信を広げた。簗氏は週刊誌報道で発言が取りざたされた際、農相就任前の発言だったとの理由で説明を拒んだ。国会議員は国民を代表して予算配分や執行をチェックするのが仕事であり、閣僚でなくても疑念を持たれた言動について説明責任を果たすのは当然である。その自覚もないようでは政治家としての資質に欠ける。
その後、批判の高まりを受けて発言を撤回し謝罪したが、納得のいく説明はないままだ。これでは大規模な公共事業を担う省庁のトップはとても任せられない。高市早苗首相はすみやかに農相を更迭するべきだ。
首相の任命責任は重大である。簗氏は派閥裏金事件で党の処分を受けた議員として初入閣した。過去に、性的少数者は「生物学上、種の保存に背く」という趣旨の差別発言でも物議を醸した。こうした人物を抜てきし、問題発言を重ねても続投させるのか。首相の判断が問われる。
政治力を示すため「国とのパイプ」をアピールする政治家の姿は、実は見慣れた光景でもある。この問題にどう向き合うかは自民政治の今後に関わる。他の省庁や地域でも選挙での支持、不支持が行政の公平性をゆがめていないか。信頼回復に向け、首相や自民幹部には自らを厳しく律する姿勢が求められる。
























