灘マンスリー
「神戸と沖縄のダブルなんです」。母方の祖母は沖縄出身。戦時中に水道筋の近くに移り住んだ。「だから私は沖縄3世。いや、水道筋と沖縄のダブルかな」と笑う。
自宅には「沖縄」があふれていた。方言はもちろん、置物もレコーダーから流れる音楽も。そんな祖母が亡くなって5年が過ぎたころ、たまたま沖縄出身の歌手喜納昌吉さんの歌を聴いた。全身に震えを覚えた。当時、オペラ歌手を目指す音大生だったが、「オペラやってる場合ちゃう。神戸に沖縄民謡を広めたい」と、すぐに水道筋にあった教室の門をたたいた。通常10年かかる講師免許を4年で取得するほど、はまった。
地元商店街のイベントで度々、沖縄民謡を披露する。今月28日の夜店でも、芸名「三線育」としてステージに立った。「地元なのに『お疲れ様』言うて歌うだけでは…」と、裏方として関わることもある。毎月開催する「つまみ食いツアー」のガイドも板についてきた。
映画館があり、毎日が年末のようににぎやかな時代から街と共に育ってきた。「水道筋が好きすぎて、パスポートすら作ってこなかった。海を渡ったのは淡路島と沖縄に行った時くらい」。そう言って笑う生粋の“水道筋っ子”だ。
同級生が帰ってきて店を継ぐ時代に入っている。新しく水道筋に来た人もいる。「人の入れ替わりが激しいのにまとまりがある。人情に熱いんでしょうね」
沖縄出身者が多く暮らし、近くに沖縄を感じられる「ここ」は、神戸との架け橋になりたいと活動を続ける「ダブル」にとって、等身大でいられる場所なのである。(坂山真里緒)
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