灘マンスリー
神戸市灘区水道筋にある商店街の一つ「エルナード水道筋」には、26年間、ほぼ毎日続く光景がある。
同商店街「ゑみや洋服店」の江見義麿会長がほうきとちり取りを手に、午前8時半から約1時間、アーケードを歩き回る。「今日はええ天気やね」。たばこの吸い殻や紙くずなどを拾いながら、行き交う住民らと言葉を交わす。
「いつも声を掛けるから、みんなすっかり友達や。名字を知らん人も多いけど」と笑う江見さん。掃除を始めた時期は1992年にまでさかのぼる。地域と一緒に発展する洋服店にしたい、と思い立ったという。
最初は、自分の店の前だけだった掃除の範囲はいつしか拡大。今では洋服店の従業員らと4人で周辺の道路計約100メートルを清掃して回る。活動が続く理由を「趣味みたいなもん。昔はみんな店先を掃除していた。そういう文化があってん」と飾らずに語る。
黙々とこなしていた作業も、阪神・淡路大震災をきっかけに、住民らに積極的に声掛けをするように。被災しうつむく人たちを元気づけようとしたのだそうだ。あのとき声を掛けてくれてありがたかった-。今でも時々そう言われる。
ふと、ごみを掃いていた江見さんがほうきを脇に置き、軍手を外す。「おはよう、今日はご機嫌やね」。親と保育園に向かう子どもとハイタッチ。多い日には30組もの親子を見送る。
掃除が終わり、午前10時の開店時間が近づく。軒を連ねる店舗のシャッターが続々と開く。いつもと同じ商店街の一日が始まる。(那谷享平)
2018/8/1灘・水道筋 街の人はどこが好き?2018/8/10
ロシア料理と和スイーツ 水道筋で人気の二店2018/8/10
アクセル全開で新聞お届け 急坂と戦う本紙配達員2018/8/9
灘高架下、町工場から「アート村」に変貌 神戸2018/8/8
玩具花火5千発打ち上げ 父親らが作る子ども達への花火大会2018/8/7
新聞の支払い、あえて選ぶ集金 その理由は…2018/8/4
炭火焙煎、薪で焼いたパンをヒントに 創業90年の萩原珈琲2018/8/3
ネーミングに秘話… 神戸の「プリンセスソース」2018/8/2
神戸・水道筋掃除して26年 ほうき手に洋服店会長2018/8/1
インドア派も気軽に摩耶山 多彩な「マヤカツ」2018/7/31
早朝の景色に「ほっ」 摩耶埠頭方面を一望2018/7/28
水道筋と沖縄を歌でつなぐ 民謡歌手・竹下育さん2018/7/30
水道筋・老舗の味【下】和菓子「美吉堂本舗」 伝統に工夫加え87年2018/7/26
水道筋・老舗の味【中】コロッケの水野家 変わらぬ味で60年2018/7/25
水道筋・老舗の味【上】洋食店・千疋屋 義父と夫の“秘伝”継ぐ2018/7/24
神戸初、灘中央市場に防災空地へ取り組み2018/7/23
とってもディープな水道筋商店街の「夜の顔」2018/7/21
水道筋飲食ツアー 密着取材で飲みすぎて…2018/7/20
夜の水道筋・大人ツアー「味・酒・乱」密着取材2018/7/19
水道筋は「巨大なデパ地下」 450店が軒連ね千円あれば満腹2018/7/18