■落ち込み取り戻す難しさ
「神戸港のコンテナ埠頭(ふとう)で荷物を積んだトラックから『もうすぐ行きます』という電話連絡が入る件数も増えてきましたよ」
船腹に「WE LOVE KOBE」と書かれた大型フェリーに目をやり、阪九フェリー神戸支店長の毛戸達郎さん(53)は、復旧ぶりをこう説明した。
船内の電源で温度調整しながら航海する保冷トラックは、震災前水準に近づいてきた。神戸港で荷揚げした輸入食品などを積んでいることが多く、毛戸さんは、フェリーに乗る保冷トラックの数でミナトの復旧の進み具合をはかっている。
神戸港の六甲アイランドと泉大津発着で、北九州・新門司を結ぶ同フェリー。一九六八年、日本初の長距離フェリーとして神戸で誕生した老舗(しにせ)航路だ。震災では神戸港の岸壁が使えなくなり、神戸便を泉大津港へ”避難”させて運航した。
阪神高速神戸線が復旧した昨年十一月、震災前と同じ一日二往復体制に戻した。が、一時移転した泉大津と神戸へ車で走らせた場合、高速道通行料に差があることが障害となり、名古屋以東からの一部利用者が泉大津へ流れたままという状況。
同フェリーも昨年末から今年正月明けにかけての帰省ラッシュでは、泉大津航路はすぐ予約が満席になった。が、神戸便の出足はいまひとつだったという。
「東京など遠方の客が減った。もう大丈夫だと知らせているが、神戸が復旧していることが徹底されていないようで…」と嘆く。
神戸海運監理部輸送課長の村上修策さん(53)は「いったんルートを変えた利用客を取り戻すのは難しい」と厳しい表情をみせる。
同監理部によると、全国トップ級の十一航路が発着する神戸港のフェリー。昨年十二月の輸送実績は四国(廃止航路を除く)が五万九千台で九四年同期比八九・七%、九州・沖縄方面が同九四・八%。なかでも、四国、九州行きの中長距離航路は、震災影響で発着港の大阪移転や便数削減があり、実際の落ち込みはさらに大きいという。
さらに、来年の明石海峡大橋開通…。神戸港のフェリー業界が抱える難題は震災の影響だけにとまらない。
毛戸さんは「取り巻く環境は非常に厳しいが、長距離フェリーは運転手の休けいや車の道路通行量を抑制できるメリットがある。復興が進めば、また、需要も高まってくるはず」。そう言って、船内に乗り込むトラックの行列を見つめた。
1997/2/27