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(8)造船 進水風景いつまでも
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スピード上げコスト安く
 ほのかな潮の香りが風に舞うなか、二基のクレーンにつられた大きな鋼鉄ブロックが宙を走る。船底部が完成し、船らしい姿を見せ始めた長さ約三百メートルの大型コンテナ船。鋼鉄ブロックは、その船が乗る船台に運ばれていく。

 三菱重工業神戸造船所造船工作部長の浜田孝一さん(49)は「すっかり震災前に戻った。今回は建造スピードも上げているから、進水までの工程は三カ月を切りますよ」。造船を志したのは、高校時代、神戸で進水式を見たのがきっかけ。神戸で船を造り続けることができる喜びを、だれよりもかみしめている。

 震災では、造船所も大きな被害を受けた。真一文字の亀裂が船台を南北に走り、全体で約四十センチ沈下した。艤(ぎ)装工事で岸壁に浮かべていた船も被災した。被害は造船部門だけで七十億円に上った。

 それでも、九五年五月には工場のすべての生産能力をほぼ回復。同七月には、震災後初の進水式を行っている。

 造船部門の従業員が八千人。ほかに協力会社が約四十社、千人を数える。「早く復旧する。それだけを考える毎日だった。第一船が進水した時は、本当にホッとした」と振り返る。

 神戸海運監理部によると、港があった関係で、兵庫県は、舶用工業品の生産額が全国トップを誇る。ただ、震災後は大型船を建造する造船所が一社になり、昨年、県内で建造された大型船は八隻。震災前に比べ半減した。

 同監理部造船課長の山秀正祐さん(52)は「神戸は大手造船所二社が並立し、交互に進水していた。大都市の真ん中で大型船の進水が見られるのはここぐらいだった。それだけに、少し寂しくなった」と話す。

 ドックに注水して進水させるドック式が主流になったなか、神戸造船所は、船台から船が海へ滑って進水する昔ながらの船台式。作業用クレーンも百トンつりと小型だが、「工夫次第で、新鋭造船所と十分に対抗できることが、逆にこの震災で分かった」と浜田さん。

 「神戸で船を造り続けるためには、コストを安くしなければ。スピードを上げて、年に五隻、六隻と建造していきますよ。大勢の見物客に、自分たちの造った船の進水を見てもらうためにもね」

1997/3/7
 

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