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被災者自立支援金の支給をめぐり、神戸市内で被災した萩原操さん(63)が、「震災後結婚し、世帯主でなくなったため、支援金支給を却下されたのは法の下の平等に反する」として、阪神・淡路大震災復興基金(代表者理事・井戸敏三県知事)を相手に、支援金百万円の支給を求めた訴訟の控訴審判決が三日、大阪高裁であった。岩井俊裁判長は、一審・神戸地裁の判決を支持。復興基金側の控訴を棄却した。
岩井裁判長は、一審同様、復興基金を「民法上の財団法人だが、実質的には地方公共団体に準じる法人」と位置付け、「支援金の認定申請に対し、公平・平等な取り扱いをすることが要求される」と判断。
「世帯主が被災者」とした支給要件について「震災から三年を経た一九九八年七月一日を基準日とするなど、政策的、技術的要請に基づく裁量権を逸脱・乱用したもの。世帯間および男女間の差別を招来、公序良俗に反し無効」とした。
その上で「無効な要件を充足していないことを理由にした申請却下は、信義誠実の原則上許されない」と指弾した。
また、「支援金制度は恒久住宅への移行促進が目的」との基金側の主張に対し、「制度は、被災者や被災世帯を対象に、自立生活の支援を図ることを趣旨としたものと理解される」と退けた。
判決によると、操さんは震災で同市長田区の自宅アパートが全壊。九七年十一月に被災者でない夫の行夫さんと結婚した。操さんを世帯主として二度、支援金の申請をしたが、「生計を維持している確認が取れない」と書類不備を理由に却下され、九九年三月、行夫さん名でも申請したが「被災者でない」と再び却下された。
行夫さんは九九年八月に神戸市を、二〇〇〇年三月、同基金を相手に提訴。昨年四月の一審判決は、同基金に支援金百万円の支払いを命じ、基金側が控訴していた。
行夫さんは昨年六月、六十一歳で死亡、妻の操さんが同訴訟を継承していた。
【自立支援金】
被災者生活再建支援法の付帯決議に基づいて創設された。一九九八年七月一日を基準日とし、同年十一月から支給が始まった。震災で住居が全半壊(焼)するなどの被害を受けた世帯に対し、年齢や所得に応じて最高百五十万円を支給。同基金から委託を受けた市町が審査・決定し、今年三月末までに約十四万五千七百世帯が約千四百四億円を受給している。