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(8)変わる街 暮らしやすさを求めて
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「デッサン」で鞍本長利さんと語るなおちゃん=2月17日、神戸市長田区水笠通4
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「デッサン」で鞍本長利さんと語るなおちゃん=2月17日、神戸市長田区水笠通4

「デッサン」で鞍本長利さんと語るなおちゃん=2月17日、神戸市長田区水笠通4

「デッサン」で鞍本長利さんと語るなおちゃん=2月17日、神戸市長田区水笠通4

 なおちゃんは、子ども会で育ったようなもんやな。ほかの子の世話する方にまわって楽しめる子やった。「西田のおっちゃん、なんか手伝おか」って、寄って来る。「こんなゲームしよか」と言うと、きっちり下準備してしまう。器用やね。

 うちの子ども会は、よそと違った。頑張った子に景品を出す。真剣になるからおもろいし、けがも少ない。家業が菓子問屋やから景品にする菓子は売るぐらいあるんよ。大人を的にボール当てとか、水鉄砲のかけ合いとか、親が遊びたくて子どもを連れてきた。大人も子どもも顔なじみだったし、子ども会の縁で消防団にも入ってもらった。

    ◆

 大学生になったなおちゃん(23)は二〇〇〇年六月、神戸市須磨区衣掛町で住宅の一階を借り、駄菓子屋兼フリースペース「宙(そら)」を開く。

 実家近くの西田幸広さん(56)経営の菓子問屋から売価十円の駄菓子を仕入れた。大きなテーブルのまわりに、近所の子どもたちが集まるようになった。相生市でキャンプをした。なおちゃんに悩みを相談する子もいた。

 「あれは子ども会の延長」と、父の藤原修さん(49)は話す。西田さんが代表だった子ども会で、なおちゃんも修さんも「一緒に遊んだ」。

 震災後、子どもが減り、その子ども会は再開できずにいる。西田さんが卸していた近所の駄菓子屋五軒も店を閉めた。

 消えた子どもの居場所を復活させようと、なおちゃんは約二年間、取り組んだ。

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 「電柱は人を殺す」。鞍本長利さん(53)は地震の教訓をそう語る。倒れた電柱が車いすの娘二人の避難を阻んだ。もし火の回りが早かったら-。なのに、復興土地区画整理事業の対象地区でさえ、電線は一部でしか地中化されていない。

 長利さんは〇二年、神戸市長田区水笠通四に自宅を再建した。一階にカフェ・バー「デッサン」を開いた。車いすの人も利用できるように、段差がなく、トイレが広い。

 周辺は更地が目立つ。市場で妻の伴子さんが洋服店を営んでいたが、再開しても売り上げを期待できず、業種替えを決めた。昼は伴子さんが喫茶店、夜は長利さんがバーのマスターをする。長利さんは介護が必要な人を支援するNPO法人の管理者と兼業だ。

 「車いすで飲める場所がなかなかない。ほんなら自分らで造ろうか、ということになった」

 しっくいの白壁がおしゃれな店に、障害の有無にかかわらず人が集う。

 街は、暮らしやすくなったのだろうか。

2004/3/29
 

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