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震災10年 守れ いのちを 第3部 史上最大の派遣

(8)OB採用 有事、防災 薄れる境界
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 九月一日、兵庫県明石市二見町の人工島で開かれた同市の防災訓練。陸上自衛隊第三飛行隊(大阪府八尾市)のヘリコプター一機が、上空に現れた。

 旋回を繰り返し、被害状況を把握する。地上では、人命救出に向かう陸自第三特科連隊(兵庫県姫路市)の車両が砂ぼこりを上げて現場に向かった。

 明石市は今春、陸自OB二人を危機管理の専門家として採用した。新設の防災安全担当理事に就任した大野康則・元陸将補(55)と、補佐役の担当主幹。大野理事は「自衛隊は、非常時の対応について徹底的に訓練を積んでいる」と、重責への自信をにじませる。

 陸自ヘリが同市の防災訓練に参加したのは、今年が初めてだった。

 自治体の防災、危機管理部局に採用される自衛隊OBが急増している。防衛庁の調べでは、六月現在、二十四の都府県庁と十四市役所で計四十五人。すべてが阪神・淡路大震災後の採用だ。

 兵庫県はこの数に含まれていないが、一九九八年から災害対策センターの宿直要員として、陸自OBを採用している。防衛庁のデータに表れないところでも、行政への浸透が進む。

 石破茂防衛庁長官の地元、鳥取県には、二〇〇一年から約二年間、三十代の現職自衛隊員が出向した。〇〇年十月の鳥取県西部地震で、米子市の第八普通科連隊から県災害対策本部に派遣され、調整役を務めた隊員。現職の出向は県側の要請で、全国初だった。

 「事が起きてから、名刺交換をしているようでは遅い」。片山善博知事の持論だ。西部地震の九カ月前には、陸海空の自衛隊幹部を含めた「防災関係機関情報交換会」を設置。地震発生後は、一時間で災害派遣を要請した。

 隊員の受け入れ後、災害対応のマニュアルや訓練の見直しを徹底した。有事法制の柱で、住民避難などの計画策定を自治体に求める「国民保護法」の施行(今年九月十七日)を見越し、昨年、全国初の「住民避難マニュアル案」を発表した。

 「常に有事を想定している自衛隊と、行政マンは考え方の出発点がまったく違う。日常的な議論を通して、自衛官の感覚を知るのは重要なこと」と衣笠克則防災監(53)。今は、自衛隊経験のある正規職員を防災危機管理課に配属している。

 「防災」と「有事」の境界が薄れている。自衛隊OBの採用には、「国民保護計画の策定に力を発揮してもらえる」(福井県など)という期待が大きい。防災担当部署に「危機管理」の名称を冠する自治体も目立つ。

 自衛隊にとっても、退職者採用の増加は願ってもない動きだ。隊員は、部隊の力を保つため、大半が五十四-五十六歳で定年になる。再就職支援は、重要な課題となっているためだ。

 兵庫県の「人と防災未来センター」(神戸市)で、自治体職員らを対象に開かれている「災害対策専門研修」には、自治体への再就職を意識した退職間近の隊員も姿を見せている。

 連携強化を象徴するように、震災後、自衛隊が自治体の防災訓練に参加する回数は急増した。陸自中部方面総監部によると、十年前の九四年度は五十九回だったが、〇三年度は百四十二回を数えた。

2004/9/11

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