明石・淡路島から、武庫川が流れる阪神間までを“鳥の目”で見た三枚の絵。阪神・淡路大震災の被災地の大部分が、この中に描かれている。だがこれは、安部はるみさんが構想する作品全体の半分。今後大阪、泉南、和歌山へと視角を広げ、ぐるっと三六〇度を見渡す六枚組の大作を完成させる予定だという。
昨年、一作目発表の反響は大きかった。「街を描くことで、住む人たちにこれほど喜んでもらえるなんて。今は描くのが使命だと思えます」
制作の前に街を歩き、場所の個性や心地よさをつかむ。作品は、遠い建物が大きく見えていたりする「架空現実」だ。
「被災地には、復興してうれしいところもあるし、これでよいのかと感じるところもある。ダンスしていたら楽しいだろうなとか、絵の中で街への提案もしています」
人が行動を起こすには必ずきっかけがあるものだなあと、しみじみと思います。私にとって神戸の街を描く大きなきっかけは震災だったと思います。愛して住みついた街を描き残したいと思いました。街は人が暮らすために人が作ったもの。つくづく人は凄(すご)いと尊敬しています。友人や親戚(しんせき)、親や子供がいる街を私の作品の中に見つけて、目で散歩して楽しんでいただけたならば一番の幸せと感じます。
メモ
あべ・はるみ
神戸市生まれ。京都精華大美術学部卒。御堂筋ギャラリー大賞展大賞など受賞。神戸市東灘区在住。
=おわり=
2004/12/22