神戸・六甲アイランド南側のコンテナバース(岸壁)に横付けされた大型船。側面には大きく「MAERSK」(マースク)の文字。コンテナ船世界最大手APモラー・マースク(本社デンマーク)が運航する欧州航路の船だ。約9千個(20フィート換算)が積めるこの船に、2基のガントリークレーンが忙しくコンテナを積み降ろす。
海上から見ると、六甲アイランドとポートアイランドの間は意外と狭い。その距離約2キロ。この「水道」の両岸に水深14~16メートルの高規格岸壁が10カ所ある。キリンのようにクレーンが立つこの物流基地が神戸港の主役だ。
「どんな船でも自由に着岸でき、荷物を積み降ろせる態勢が最重要」(国土交通省)。これが不十分だと、船は航路から神戸港を外す。港の関係者が最も恐れる「抜港(ばっこう)」だ。
阪神・淡路大震災以降、神戸港は抜港の連続だった。北米や欧州を結ぶ基幹航路の数は現在11。震災前の4分の1だ。「このままでは地方港になりかねない」。外貿コンテナの国内輸送最大手、井本商運(神戸市中央区)社長の井本隆之(54)は指摘した。
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世界の港湾別コンテナ取扱量で、神戸港は1980年に世界3位だった。95年の阪神・淡路大震災で23位に急落し、今は52位。アジア経済の急成長で国内港は軒並み地位を落としたが、神戸港の衰退は際立つ。震災以降、横浜港、東京港にも抜かれ、国内首位に返り咲くことはなかった。
「21世紀のアジアのマザーポート」。震災3カ月後、神戸港復興計画は「単なる復旧ではなく、震災を乗り越えた新たな国際貿易港を目指す」とうたった。20年がたとうとする今、アジアのマザーポートは名実ともに上海やシンガポール、香港、釜山などだ。
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「神戸港のコンテナ取り扱い能力には余裕がある。貨物を集める施策を」。昨年10月、港湾物流最大手、上組(神戸市中央区)会長、久保昌三(まさみ)(71)は、ポーアイ2期の岸壁を視察した国土交通相太田昭宏(68)に懇請した。太田は「国際競争力を取り戻せるよう国が前面に立って具体策を進めたい」と返した。
国と神戸市は、西日本を巡る内航船に補助金を出すなど懸命にコンテナの集荷に取り組む。震災から20年を前に、製造・物流業を港に呼び込み、貨物を増やす「創貨」にも力を入れる。
久保は言う。「ものづくりがあってこその港。日本のコンテナ取扱量は世界7位の規模があり、あらゆる手段で新たな貨物を集められるはずだ」=敬称略
(高見雄樹)
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〈神戸港の現状〉2013年のコンテナ取扱量は、前年比0.6%減の255万3千個。輸出入総額は7%増の8兆1640億円で、国内では名古屋、東京、横浜港に次ぐ4位。重電機器や建設機械の輸出が多い。
2014/6/24