神戸港を見下ろす神戸商工貿易センタービル19階に、ドイツの国際物流大手DHL傘下のDHLグローバルフォワーディングジャパン(東京)の関西支社がある。荷主から預かった貨物を最適な輸送手段で運ぶ「フォワーダー」。この西日本の司令塔が、今年4月に大阪から移転してきた。
「欧州航路の拠点は神戸。海上貨物を増やす」と関西支社部長の西本賢市(48)。7月からは、貨物量などに応じて、全国の欧州行き海上貨物を陸送で神戸港に集めて輸出する。船積み量を増やすことで、輸送コストを減らす。
関西空港から輸出入する航空貨物、神戸港で扱う海上貨物。双方を見据えて神戸を選んだ。
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安価な運賃で大量に運ぶ海上輸送、スピードの航空輸送、機動力の陸上輸送。物流大手は陸海空の物流インフラの活用や整備に力を入れる。
米航空貨物大手フェデックスは4月、関西空港に設けた貨物施設の運用を始めた。関空を北東アジアの集荷拠点と位置付け、集めた貨物を米国へ。取扱量の伸びが見込まれ、新関空会社は「国際貨物ハブ(拠点)空港」を目指す。
一方、阪神港(神戸、大阪港)は国の「国際コンテナ戦略港湾」に指定され、ハード整備とサービス向上を推進。基幹航路の維持に懸命だ。神戸大名誉教授の黒田勝彦(71)=港湾計画・国際物流=は言う。「企業は常に最適なサプライチェーン(調達・供給網)を求めている。ニーズに応えられる物流インフラを備えた地域が、都市間競争を勝ち抜く」
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神戸・六甲アイランド南端。海に面して神戸航空貨物ターミナル「K-ACT(ケイ・アクト)」の倉庫が並ぶ。木箱や段ボールに入った機械類が目立つ。通関などの手続きを済ませ、阪神高速道路湾岸線で関空へ。うたい文句は「神戸港に空の機能」だ。
神戸市などが開設したのは関空開港の1994年。貨物を神戸港から船で関空まで運び「海と空をつなぐ」はずだったが、湾岸線の利便性が勝り船は廃止された。今も航空貨物を扱うフォワーダー8社が利用する。
その一つ、神鋼物流(神戸市中央区)の子会社エアモーダルサービス(同市東灘区)社長の石井宏昌(62)は「荷主に近いところで関空よりスムーズに作業ができる。そこが評価されている」と話す。
物流は生き物。高い利便性、安い価格を求めて絶えず動く。陸海空のインフラが利用者にどう「最適」を提供するか。それが関西経済の行方を左右する。=敬称略=
(石沢菜々子)
〈フォワーダー〉荷主から貨物を預かり、船舶や航空、鉄道、トラックなどを利用して運送する仲介業者。主に国際貨物を扱う。神戸市は神戸港を経由してコンテナ貨物を運ぶフォワーダーらに補助金を出している。
2014/7/3