神戸・六甲アイランド東側の岸壁では、大量の油圧ショベルが船積みを待つ。黄色のアームには「KOMATSU(コマツ)」「CAT(キャタピラー)」のロゴが光る。
建設機械最大手のコマツ(東京)は輸出する建機の半分を神戸港から出す。主力の大阪工場(大阪府枚方市)で製造した大型建機は分割して六アイ内の工場へ陸送、組み立てて全世界へ。「輸出先で組み立てるより、国内で最終製品にする方が品質が安定する。港が工場の近くにあるからこそ」。大阪工場副工場長の木村隆吉(りゅうきち)(55)は話す。
「建機王国」と言われる兵庫。コマツのほか、キャタピラージャパン(東京)、コベルコクレーン(東京)、川崎重工業(神戸市中央区)子会社KCMなどが拠点を持つ。
神戸港の建設用・鉱山用機械輸出額は2013年で2682億円。輸出総額の5%を占め、品目別では4位。ものづくり企業の集積がミナトを支える。
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「神戸港と神戸経済はコインの裏と表。港の活性化は経済の成長につながり、経済の活性化は港の成長につながる」(日銀神戸支店)。阪神・淡路大震災時は、マイナスの連鎖が起きた。
震災をきっかけに工場移転や事業再編が相次いだ。「失われた20年」の中、縮小は止まらない。近年では三菱重工業神戸造船所が商船建造から撤退。神戸製鋼所は神戸製鉄所の高炉休止を決めた。
被災地の製造品出荷額は10年調査で震災前の8割にとどまる。「兵庫は構造変化についていけず、地位を下げた。これは神戸港の凋落(ちょうらく)とも重なる」。日銀神戸支店長鉢村健(54)の分析だ。
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尼崎市臨海部。パナソニックの白亜の工場が海面に映る。プラズマディスプレーの世界的な生産拠点として05年9月以降、順次操業したが、需要激減で昨年末までに生産を終了。その分、神戸港の輸出量は減った。
震災前、同社は輸出入製品の半数近くを神戸港で扱っていた。震災直後は1割に激減。05年には震災前水準に戻したが、近年は2~3割にとどまる。輸入は消費地に近い地方港を使うようになった。
「単純な組み立てのものづくりはもはや日本ではできない」とパナソニック社長津賀一宏(57)は嘆いた。日本のものづくり産業の苦境は、変化を迫られる物流の姿をも浮き彫りにする。港の再生は、製造業の将来像と重なる。=敬称略=(石沢菜々子、高見雄樹)
〈兵庫の製造業〉 総生産に占める業種別構成比は製造業が24.3%と最も高い。サービス業も22.5%。製造品出荷額は全国5位。13年の工場立地動向調査では、兵庫の立地件数は前年比4.4%減の65件で全国8位。(写真説明)船積みを待つ油圧ショベル。神戸港から国内外に運ばれる=六甲アイランド(撮影・宮路博志)
2014/6/27