阪神・淡路大震災に関する印刷物や写真、映像などを蓄積する神戸大学付属図書館(神戸市灘区)の「震災文庫」。1995年10月に開設され、増え続ける所蔵資料は約5万2千点に上る。
今、収集を担当するのは同館電子図書館係の小村愛美(いつみ)(27)。新聞を毎日読み、週刊誌や自治体の広報紙にも目を通す。
「東日本大震災後、資料収集の意義が再認識され、視察や問い合わせが増えた」。19年近く続く作業を受け継ぐことに、重い責任を感じている。
収集と並行し、同文庫では、ビデオテープやフロッピーディスクを、DVDなど新たな記録媒体に移す作業が進む。99年からは、デジタル化した資料をホームページで順次公開する。現在、約5千点を閲覧できる。
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パソコンやデジタルカメラが一般化する以前に発生した阪神・淡路は、写真や映像のほとんどがフィルムなどのアナログ方式で記録された。
震災20年を前に、膨大な記録をデジタルに変換する取り組みが進む。
2年前に神戸市が開設した神戸アーカイブ写真館(同市長田区二葉町)。神戸の街や市民生活などを写した明治以降の約15万点が閲覧でき、約1万2千点が阪神・淡路関連だ。タブレット端末を操作すると、地域やテーマで写真が検索できる。
神戸市や市文書館(同市中央区)などが保管していた写真を、デジタル化した。長田区の震災資料の整理を手がけてきた東充(あずまみつる)(69)=同市垂水区=らが、1点ずつデータを読み取った。
「倉庫には、パンパンになった段ボール箱が無数に放置されていた」と東。市はそれまで、写真の整理に無頓着だった。
市広報課の担当課長時代、写真館の開設を企画した市地球環境課長の横山民夫(50)は「貴重なデータも、市民に活用してもらわなければ意味がない」と語る。
昨年12月には、長田区内の約100カ所で、スマートフォンをかざすと被災当時の写真が表示される「震災写真アーカイブマップ」の試みも始めた。デジタル化で活用の幅は一気に広がった。
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西宮市は震災直後からいち早く、写真のデジタル化を進めてきた。
2008年、市所蔵の約5千枚をウェブサイト「震災写真情報館」で公開。地理情報システムと連動させ、地図上で撮影場所も表示する。先進的な事業として、他の自治体からも注目される。
「デジタル化して保存するのは難しくない。問題は、どう見せるか」。担当した元市職員の吉田稔(66)は言う。
しかし、今も資料の整理さえできていない自治体は少なくない。淡路市は震災時の5町が合併され、写真や資料の保存場所も分散。今のところデジタル化の予定はない。
芦屋市では本年度、震災20年の事業として、写真や文書のデジタル化がようやく始まる。=敬称略=
(黒川裕生)
2014/7/16