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限界住宅 支え合うためには

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娘の仏前で手を合わせる寺田孝さん。1人暮らしの日々を遺影が見守る=神戸市長田区西尻池町1(撮影・中西幸大)
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娘の仏前で手を合わせる寺田孝さん。1人暮らしの日々を遺影が見守る=神戸市長田区西尻池町1(撮影・中西幸大)

娘の仏前で手を合わせる寺田孝さん。1人暮らしの日々を遺影が見守る=神戸市長田区西尻池町1(撮影・中西幸大)

娘の仏前で手を合わせる寺田孝さん。1人暮らしの日々を遺影が見守る=神戸市長田区西尻池町1(撮影・中西幸大)

 毎朝、神戸市長田区の復興住宅「兵庫県営西尻池高層住宅」に住む寺田孝(75)は、仏前で手を合わす。目を閉じて、十数秒。壁には、ほほ笑む若い女性の写真が掛かる。

 寺田は阪神・淡路大震災で長女の弘美=当時(30)=を失った。妻と離婚後、男手一つで育ててきたまな娘だった。

 彼女が1人暮らしをしていた長田区御蔵通のアパートは全焼した。「きっと、どこかに逃げているはずや」。信じて避難所を回ったが、見つからない。自衛隊が焼け跡から、遺骨を拾い上げたのは地震の4日後だった。

 同市須磨区の自宅も全壊。娘の成人後の写真はすべて焼けてしまった。高校の同級生からもらったスナップを引き伸ばし、遺影にした。

 「残りの人生、人の役に立てたら」

 2008年、別の復興住宅から移り住み、ここで自治会副会長を引き受けたのは、そんな思いからだ。備えの意識が薄れていると感じ、避難訓練をしたこともあった。

 しかし、両足の動脈硬化が悪化。カテーテル手術を行ったが回復せず、再手術もあり得る。

 悩んだ揚げ句、9月末で副会長を退いた。

     ◆

 一方、県住宅供給公社に受け取ってもらえなかった自治会の解散届を手に、会長の早稲田輝男は悩みを深めていた。

 「役員は自分一人だけ。本音を言えば、すぐにでも辞めてしまいたいが、住民を思うと…」

 役員がいなくなれば、真っ先に影響が出るのが共益費だ。住民から月2千円を集め、エレベーターの電気代や集会所の水道代を支払う。滞れば生活が成り立たず、公社からは「住民のために続けてほしい」と説得された。

 県は、県営住宅の管理を公社などの指定管理者に委託。ただ業務を分担し、共益費は自治会に任せている。

 県住宅管理課の飯塚功一課長は「入居者に過大なお願いをしているわけではない」とした上で、「高齢化が担い手不足の一つの要因とは認識している。個別に話を聞き、指定管理者に共益費の徴収・管理を委ねる方法を考えている」と話した。

 「鉄の扉の向こう」

 入居当初、復興住宅はそう言われた。住民同士のつながり、コミュニティーの大切さが強調された。

 しかし、20年近くたち、高齢化率は全体で49・2%。行政も復興住宅の自治の難しさを、認めざるを得なくなっている。過疎などで社会的な共同生活が成り立たないとされる「限界集落」と同じように。

 さらに、住まい続けることさえ難しい復興住宅がある。

=敬称略=

(上田勇紀)

2014/11/7
 

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