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限界住宅 支え合うためには

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神戸市に対し、復興住宅への学生入居を提案する牧秀一さん=神戸市役所
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神戸市に対し、復興住宅への学生入居を提案する牧秀一さん=神戸市役所

神戸市に対し、復興住宅への学生入居を提案する牧秀一さん=神戸市役所

神戸市に対し、復興住宅への学生入居を提案する牧秀一さん=神戸市役所

 9月末、神戸市役所。NPO法人「よろず相談室」(同市東灘区)の牧秀一(64)が、住宅政策課長の中原信に問いかけた。

 「復興住宅に学生が入居する仕組みをつくれないか」

 阪神・淡路大震災直後から被災者に寄り添う牧。HAT神戸(同市中央区)などの復興住宅を訪れ、自治会の破綻や孤立する高齢者の姿を目の当たりにしている。

 「学生が電球交換や見回りといった仕事を手伝う。若者にとっても得難い経験になる」

 牧がヒントにしたのは、明舞(めいまい)団地(明石市、神戸市垂水区)だ。公営住宅の単身入居は60歳以上や障害者に限られるが、兵庫県は3年前、空き部屋を利用し、国の特例を得て学生に低家賃で貸し出した。世代を超えた交流が生まれ、学生自身の研究にも役立っている。

 しかし、中原は困惑した。「公営住宅は住宅困窮者のためのもの。HAT神戸は倍率が100倍にもなる。そういう所では難しい」

 さらに、復興住宅には高齢者向けのシルバーハウジングも多い。手厚い制度が、かえって多世代の入居を阻む。

     ◆

 「復興住宅に弱者ばかり集めれば、後に問題が出るのは分かっていた」。立命館大の塩崎賢明教授(住宅政策)は指摘する。「世代や階層の異なる人が混在する『ソーシャルミックス』を進めなければ」

 行政も手をこまねいてきたわけではない。兵庫県は2006年度以降、夫婦の合計年齢が80歳未満の世帯などが対象の優先枠を設け、少しずつ募集割合を増やしている。

 神戸市は04年、NPO法人「阪神高齢者・障害者支援ネットワーク」(同市西区)に、同市須磨区の復興住宅「新大池東住宅」の一室を貸し出した。今年9月、73歳で急逝した理事長の黒田裕子が時には泊まり込んで、高齢者に声をかけた。

 同法人は週3回、集会所でふれあい喫茶を続ける。スタッフの小川秀子は「喫茶で感じたことを黒田さんに細かく伝え、昼と夜で分担して見守れた」と振り返る。

 民間団体に公営住宅の一室を貸すのは異例だったが、「目的外使用として国に申請した」と神戸市。同市営住宅の空き部屋率は、借り上げ復興住宅の転居先を確保する影響もあり、10年3月の11・5%から今年3月に16・1%に増加。今後も増える見込みという。

 山間地の限界集落と同じように高齢化は進むが、復興住宅の多くは街中に位置する。知恵の絞りようはあるはずだ。

 「まだ間に合う。もう孤独な最期を見たくない」。牧の言葉は、20年を目前にした被災地からの問い掛けでもある。

=敬称略=

(上田勇紀)

=おわり=

2014/11/16
 

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