序文
かつて関東大震災(1923年)がそうであったように、阪神・淡路大震災は、災害多発国である日本に重大な転換を迫った。
1995年1月17日午前5時46分。死者6434人、行方不明者3人。高齢社会に突入した先進国の都市を襲った大震災は、世界的にも例のない被害をもたらした。
この国はその教訓を生かしているのか。被災地のただ中にある新聞社として、私たちは問い続けてきた。しかし、2011年に起きた東日本大震災は、その努力と覚悟が全く不十分であることを示した。関連死を含め、死者・行方不明者2万1000人以上。この国が抱える課題はより鮮明になり、深く進行している。
あの日から20年。私たちは自らの原点である1月17日を「祈りの日」とし、亡き人々の魂を受け継いで阪神・淡路大震災に向き合い続けていくことをあらためて誓う。「兵庫発」の経験と教訓を次世代、そして国内外に伝え続けることを自らの責任と位置付ける。
阪神・淡路、東日本大震災が浮き彫りにした問題は、少子高齢化、人口減少が避けられない日本の全ての自治体、市民に共通する。今の社会のありようでは、南海トラフ地震や首都直下地震など、今後この国を襲う巨大かつ複合的な災害に到底立ち向かえない。
私たちはまず「災害とともに生きる覚悟」を強く持たねばならない。その覚悟がなければ、命を守る行動は生まれない。次代に伝える思想を醸成することもできない。
私たちは、社会の在り方を根本から問い、生き方や暮らし方の創造へとつないでいく。兵庫から、あるべき成熟社会の姿を模索し続ける。
それが被災地に生きる者の責務であり亡き人々の魂に向き合う道である。