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 NHKで先月放送された「マンゴーの樹の下で~ルソン島、戦火の約束」は、フィリピン攻防戦に巻き込まれた女性たちの過去と現代を描くドラマだ。空襲体験がある岸恵子さんらが出演し、平和の尊さがじわりと伝わる、令和最初の夏にふさわしい番組だった。

 戦後生まれが人口の8割を超え、戦時の記憶が急速に薄まっている。戦争ドラマも以前に比べて随分減った気がする。風化を防ぎ、バトンをつなぐ作業が一層大事になってきたな、と改めて感じる。

 鍵を握るのが、戦地や空襲の実態や当時の暮らしが分かる資料だろう。戦後75年の節目となる2020年を控え、兵庫県内の自治体も新たな取り組みに知恵を絞る。

 明石市では20年度をめどに、資料室を新設する見込みだ。尼崎市でも20年秋から、初めて常設展示する計画が浮上している。積極的な姿勢を評価したい。

 一方、神戸市は「神戸平和記念館」の建設構想を練り、阪神・淡路大震災前年の1994年に有識者らの懇談会を立ち上げた。98年に「戦争体験の継承の場」などからなる基本構想の報告書がまとまったが、震災による財政難を理由に凍結され、現在に至る。

 市は市立兵庫図書館の一角に資料室を設けるとともに、インターネット上には資料画像を公開する「神戸災害と戦災資料館」を開設するなどしている。だが資料室の狭さや、実物より訴求力に劣る点などを指摘する声は根強い。

 記念館の実現を求める市民団体「神戸に平和記念館をつくる会」代表の下司(げし)幸子さんは「市は、報告書の趣旨を生かし、常設展示、資料保存、教育学習の機能を整えてほしい」と訴える。

 神戸親和女子大の洲脇一郎教授(日本近現代史)は「震災と戦後50年の年が重なったこともあって、神戸市は戦争の歴史を十分に振り返ることができていない。その意味からも平和資料館的なスペースが必要ではないか」と述べる。

 当然のことだが、戦争体験者は近い将来ゼロになる。継承のためのしっかりとした土台を築くのに残された時間は少ない。

 新たなハコモノづくりに反対意見もあるだろう。しかし、姫路市は23年前に空襲被害を伝える平和資料館を開設している。「平和都市」を宣言し、「非核神戸方式」を決議した神戸市にふさわしい取り組みは何か。今こそ、市民を巻き込んだ議論が必要ではないか。

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