阪神・淡路大震災から17日で27年。それぞれが一日、一年をかみしめる。
兵庫県淡路市久留麻の「千年一酒造」では16日、震災復興のシンボルとして親しまれている特別純米酒「千夢酔(せんむすい)」の初搾り会が開かれた。日本酒愛好家でつくる「淡路酒探偵団」のメンバーが、犠牲者を悼み静かに杯を掲げた。
千夢酔は、同探偵団が1995年初頭の完成を目指し、仕込みを同社に依頼した。淡路の米と水を使うなど、材料にこだわった。完成を目前に酒蔵は壊滅的な被害を受けたが、千夢酔のタンクは奇跡的に残っていた。それを見た職人たちは奮起し、翌月に酒を完成させたという。仕込みはその後も続け、今年で28年目となる。
杜氏(とうじ)で社長の上野山善彦さんは「当時の社長は廃業も考えたと聞く。この酒のおかげで今がある」とあいさつ。メンバーらは新酒を味わった後、ひしゃくとじょうごで瓶詰めし、封やラベルを施して持ち帰った。
同団事務局の桜井一郎さん(72)は「この日を迎える度に、皆で涙しながら酒を飲んだ記憶がよみがえる。今後も酒造りを続け、災害に備えることの大切さを伝えていきたい」と話す。
千夢酔は一升瓶が3100円(税込み)で販売される。高田酒店TEL0799・84・0078
(内田世紀)
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