阪神・淡路大震災から27年を迎えた17日、兵庫県淡路島内各地で犠牲者を追悼し、災害に備える催しが開かれた。北淡震災記念公園(淡路市小倉)では、訪れた約50人が地震発生時刻の午前5時46分に黙とう。2年ぶりに、鎮魂と復興への思いを込めて合唱した。(上田勇紀、西竹唯太朗、中村有沙)
同公園で1月17日に被災者らが歌う合唱は恒例だったが、昨年は新型コロナウイルスの影響で中止に。今年は感染対策をして復活し、曲は「ふるさと」が選ばれた。
指揮は淡路市出身のジャズシンガー藤岡まゆみさん(45)=同県西宮市。震災当時は大学生で、富島の実家が全壊した。「こうして一緒に歌って追悼の気持ちを共有できるのは、すごく大切なこと」と語り、両手を動かして合唱を率いた。
「歌いながら、涙がこみ上げてきた」と話すのは淡路市の廣岡ひろ子さん(72)。震災でかつての職場の先輩らを亡くした。「この場所に立って冷たい風に吹かれると、あの日を思い出す。震災のことや、地域の絆を伝えていきたい」と決意を込めた。
家族を亡くした人の姿もあった。同居していた義母サヨ子さん=当時(65)=を亡くした淡路市の片山みどりさん(67)は、震災後に義父が他界し、夫も先立った。「式典は思い出を振り返る機会。これからも参加するつもり」と話し、竹灯籠を流した。
式典後に同公園を訪れた淡路市の男性(64)は、小学生だっためいが犠牲になった。家が近く、毎日のように顔を合わせていた。「いまも思い出すたびにつらい。口にしたくない気持ちもある」と話す。
地震で崩れた建物の下敷きになり、病院へ運ばれためい。その日のうちに亡くなったという。「たくましくて、優しい女の子。自分たちの結婚式で、花束を手渡してくれた」。面影をしのび、静かに祈りをささげた。
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