映画「愛に乱暴」の一場面(©2013吉田修一/新潮社 ©2024 「愛に乱暴」製作委員会)
映画「愛に乱暴」の一場面(©2013吉田修一/新潮社 ©2024 「愛に乱暴」製作委員会)

 心に闇を抱えながら、家庭にも社会にも寄る辺のない主婦が行き着く先は-。吉田修一の同名小説が原作の映画「愛に乱暴」が30日からシネ・リーブル神戸などで公開される。監督は森ガキ侑大。自身も吉田のファンといい、「映画化は今の時代だからこそ求められている」と、この作品に懸けた思いを語った。

 桃子(江口のりこ)は夫婦で夫(小泉孝太郎)の実家の離れに住む。母屋で暮らす義母(風吹ジュン)とは仲が悪いわけではないが、そのささいな言動にストレスを感じている。子どもを持つことを望み、不妊治療に通うさなか、夫の不倫が発覚。さらに愛猫の失踪、ごみ収集場でのぼや騒ぎ、講師を務める石けん作り教室の閉鎖と、安定していた生活に乱れが生じ、精神のバランスを崩していく。

 「社会的な要素にエンターテインメント性がうまくミックスしているのが吉田の小説の魅力」と森ガキ監督。「効率ばかりが求められる現代、人が本来の居場所を求めてもがく様子を映画にすれば、時代に刺さると思った」と説明する。