目の病気を治療する臨床研究を進める神戸市立神戸アイセンター病院(同市中央区)は11日、人工多能性幹細胞(iPS細胞)から作った網膜色素上皮細胞を移植する1例目の手術に成功したと発表した。今後5年以内をめどに、同細胞の異常が原因で起きる病気の患者50人へ移植する予定。
研究は、厚生労働省の専門部会が1月20日に承認。光に反応する視細胞を保護する網膜色素上皮細胞が機能不全になり、目が見えにくくなる病気全般を対象とする。
手術1例目の患者は、関西地方に住む網膜色素変性症の40代男性。両目とも術前の矯正視力は0・01だった。3月上旬、iPS細胞から作った同細胞を含む液体を患者の網膜の下に注入し、予定通り約1時間で終了した。視力に効果が出るのは数週間以上後で、1年間は状態を観察する。
執刀した同病院の栗本康夫院長は「多くの人の努力、勇気を台無しにしないという使命感があったので、ほっとした。目の病気で悩む患者が将来に希望を持ってもらえたら」と話した。
次回の手術は3カ月程度後を見込む。今後、執刀医を増やし、院外施設での実施も目指す。(井川朋宏)