電車を利用する若者=神戸市内
電車を利用する若者=神戸市内

 神戸市が市内の高校に通う生徒を対象に、2024年度に始めた通学定期券の無料化(全額補助)。25年度は、市外の高校への通学者に対しても、半額を補助する。子育て世帯にとってはありがたい制度だが、久元喜造市長は会見で「神戸市としては、やむにやまれぬ対応だった」と明かした。一体、どういうことなのか。(斉藤正志)

■年間30万円を超える負担

 神戸市による高校生の通学定期券への補助は、22年9月に始まった。

 15年度にあった兵庫県内の公立高校の学区再編で、市内から通える範囲が大幅に拡大。淡路島などの高校にも進学できるようになり、電車とバスを乗り継ぐと、年間30万円を超えるケースも出ていた。

 市は、負担を軽くするため、年間14万4千円(月1万2千円)を超える分の半額を補助することを決めた。

 この制度が、その後、無料化へかじを切ることになる。

 きっかけは、大阪府が23年度に高校授業料の無償化を打ち出したことだった。

電車を利用する若者=神戸市内

■大阪府の無償化に危機感

 高校授業料の完全無償化は、吉村洋文・大阪府知事が代表を務める政治団体・大阪維新の会の公約だった。

 23年の府知事選で、吉村氏は大阪都構想に代わる看板政策として強く訴え、当選後に具体的な検討に着手。府民を対象に、公立、私立を問わず、年間授業料63万円までは国と府が、超過分は学校側が負担することが決まった。

 所得制限を設けず、保護者負担を「ゼロ」にする制度だった。24年度に3年生に導入し、段階的に広げて26年度からは全学年を対象とする。

 神戸市は、危機感を抱いた。