「なんで、つづけてるんですか?」「お金がたくさんもらえますか?」-。小学生が「はたらく」を題材に大人にどしどし質問し、答えを聞いて悩み、考えた日々を等身大でつづった本「はたらくってなんやろな?」が自費出版された。作者は、独自のカリキュラムで人気の学習塾「イドミィ」(神戸市中央区)に通う同市内の小学2~4年の男児6人。本作りを通じて感じたことは? 執筆に関わった児童たちに聞いた。(鈴木久仁子)
イドミィを運営する高橋惇さん(30)は神戸大卒。教員免許を持ちながら、お笑い芸人を目指したこともあり、異色の経歴で知られる。塾を開く前、自転車で全国を旅し、小学校など約80校に立ち寄って講演。田舎の子、都会の子、不登校の子、保健室登校の子、障害のある子…。約7千人の多彩な子どもに出会った。その中で「いい種を持っているのに水をもらえていない子がいる」と実感。それなら、と2017年にイドミィを開校した。
現在は3コースに130人が通う。全国規模のアイデアコンテストで受賞者を複数出すなどし、子どもを伸び伸びと育てる方針が保護者に支持されている。
■自信芽生える
子どもたちによる本の制作は以前も手掛けた。前作は不登校の子どもたちが作った「学校休んでええんかな」と題した本で、「みんなどんどん表情が変わり、自信がついて、羽ばたいていった」と高橋さん。今回は「いろんな大人と接点を持って、仕事のリアル、お金を稼ぐ大変さを分かってほしい。完成したらきっと自信が芽生える」と昨年9月、第2弾を企画した。
まず、アンケートから。子どもたちは10の質問を投げ掛けた。
「はたらくときに『たいへんなこと』はなんでしょう?」
公務員、商社マン、看護師、先生…。職業は多岐にわたる。「みんなとなかよくするのはすごく大へんです。時々ケンカもするし、おこられることもたくさんあります」「体ちょうが悪くても、やらなければいけないことがあるとき」。答えはどれも真剣だ。
「やりたくないことも、しなきゃいけないんだ…」。子どもたちも真剣に受け止めた。
子どもの目線にこだわったユニークな質問は続く。「ありがとうと言われにくい仕事はなんでしょう?」「仕事でひつような力はなんでしょう?」-。
インタビューで直接、話も聞いた。「もうかりますか?」「どうやって仕事を決めればいいですか」。初対面の大人とのどぎまぎした空気もにじむ。
■最大の学び
最終章では、それぞれが「いい」と考える仕事を「すきなことをする」などと枠いっぱいに手書きした。
カバーを手作業で付け、一冊の本が仕上がった。本作りで6人が手にしたのは1人1万円だった。
「これだけやって1万かー。お金もらうの大変や」と6人。山の手小2年の矢倉大馳(だいち)君は「こんなに立派な本ができるなんて、驚いた。すごいやん」、同3年の須田優真君は「将来はユーチューバーになってお金いっぱい稼ぎたい」とそれぞれ感想を口にした。
「実体験こそが最大の学び。これからも実体験をどんどん提供したい」と高橋さんは手応えを語った。
同塾は、不登校支援事業や、アウトドア体験、アート制作などをする体験学習機会提供事業も展開する。イドミィTEL078・335・6808
