半田久美子主任研究員
半田久美子主任研究員

 「加古川の河原に木材化石があります」と、小野市在住の藤井昭義氏から連絡があり、案内していただきました。行ってみると、流路の中に削り残された地層が露出していて、そのゆるやかに傾斜した面に木材化石はありました。周りの地層と同じ灰色ではじめはよく分かりませんでしたが、水をかけて表面の泥を洗い流すと黒い木材化石が現れました。今は水位が低いので乾燥していたとのこと。水位が高くなると水没するようです。

 木材化石は地層面に対して斜めに立っていました。堆積した時に変形したのか、幹は楕円(だえん)形で長径はおよそ20センチ。あまり硬くなく、珪化木ではなく炭化木のようです。年輪の面を10倍のルーペで拡大して観察したところ、木材組織の保存状態がよくなく、木の種類を判別することはできませんでした。

 この化石の周りを調べたところ、同じ面に7点の小型の木材化石が同じように立った状態で見つかりました。生きていた位置のまま化石になっていたとしたら、数メートルずつ離れていたことになります。同じ時期に生えていたかどうかも確認したいところです。

 そこで木材化石の根があるかどうか調べるために、立ち株の木材に沿って掘り下げました。深さ20センチまで掘りましたが、まだ幹が続いていて、根を確認できませんでした。凝灰岩は硬く、ここであきらめました。

 次に、この木材化石よりも下位の層が流路に近い側に広がっていたので調べてみると、地層に対して横にのびる木材化石がいくつもの層で見つかりました。細い材が多くいろいろな方向を向いていることから、流されて堆積したものではなく、この場所に生育していた木の根かもしれません。横にのびる木のうち1点は組織が残っており、針葉樹であることが確認できました。この地層は神戸層群と呼ばれ、神戸では葉の化石がたくさん見つかっています。これまでに報告された針葉樹類はメタセコイアやヌマスギ、マツの仲間などがあります。このうちのどの木材なのでしょう。

 木材の化石から昔の植生や生態を復元したいのですが、ここでは手がかりが不足しているようです。ほかの川にも立ち株の化石が残されているのではないでしょうか。河原をうろうろして、木材の化石を探してみます。