利用が減少して赤字が続く地方鉄道の存廃を巡り、自治体や事業者の要請で国が「再構築協議会」を設ける新たな制度が始まった。
今月施行された改正地域公共交通活性化再生法に基づき、JR西日本が初の事例として、芸備線(岡山、広島県)の一部区間について設置を要望した。JR西は廃止も視野に入れるが、自治体側は存続を求める声が根強く、難航は必至だ。国は結論ありきではなく、丁寧に議論を仲介していく努力が求められる。
協議の対象区間の目安は1キロ当たりの1日平均乗客数(輸送密度)が4千人未満だが、当面は千人未満を優先する。国が調整役となり、鉄道利用を促して存続するかバスなどに転換するかを議論し、3年以内をめどに再編策をまとめる。いずれの結論でも国が財政支援する。
JR西などは路線別の収支を公表し、地方路線の多くが赤字に陥っている実態を明らかにした。都市部の路線や不動産事業などの収益で赤字ローカル線を支える「内部補助」の仕組みが、人口減少や新型コロナウイルス禍で限界になりつつある。JR西は輸送密度が2千人を下回ると路線維持が困難になると訴える。千人未満なら、より厳しさが増す。
兵庫県関連では、加古川線(西脇市-谷川間)や姫新線(播磨新宮-上月間)など4路線6区間が千人未満だった。現在は県と沿線自治体、JR西などが路線維持への方策などを議論している。
事業者が経営上の観点から、廃止を考えるのは一定理解できる。ただ鉄道は地域生活と密着しており、再構築協議会の開催に応じれば議論が廃止やバス転換に向かうと自治体側は警戒感を強める。
採算性以外に、地域の実情や利用客の動向にも配慮した幅広い検討が欠かせない。物流や災害対策に不可欠な全国鉄道網の維持も考慮が必要だ。社会基盤として鉄道をどう位置づけ、地域活性化につなげるか。事業者任せにせず、協議に臨む基本的な考え方を国は示してもらいたい。
自治体の側も、赤字でも必要な路線だと事業者や国に価値を認めさせられるかが問われる。利用呼びかけや一時的なイベント開催だけでは根本的解決にならない。利用実態と需要を徹底調査することが重要だ。住民を巻き込むための工夫や、駅を中心としたまちづくりなど中長期的な戦略も求められる。
バス転換や、線路跡を用いるバス高速輸送システム(BRT)導入には、深刻な運転手不足という課題が控える。大量輸送ができる鉄道と同数の乗客を運ぶには多くの台数が要る。持続可能な交通体系の構築にも留意しなければならない。