神戸空港できょうから、国際チャーター便の運航が始まる。

 韓国、中国、台湾の5都市と1日最大6往復、週40往復で結ばれる。2030年前後には定期便の就航を目指す。神戸が国際都市としての求心力を取り戻し、訪日客の誘致に苦心する兵庫県の観光需要を創出するためにも最大限活用したい。

 06年開港の神戸空港は、当時利用が低迷していた関西空港の補完的な位置付けで、路線や発着枠、運用時間が制限されてきた。神戸沖が関空の候補地に有力視されながら、地元の反対で泉州沖に決まった経緯があるからだ。

 しかし、18年に民間企業による関空、大阪(伊丹)との一体運営が始まり、訪日客の増加も追い風に3空港の最適な運用が考えられるようになった。神戸市や兵庫県、大阪府・市など関係自治体や経済界でつくる「関西3空港懇談会」は22年、神戸への国際線就航で合意した。

 まずは今月開幕した大阪・関西万博での航空需要増を見越し、チャーター便の受け入れが実現した。神戸市は国際線就航に向け、約283億円を投じて第2ターミナルを建設し、駐機場も増設するなど基盤を整えた。同時に国内線の発着枠も1日80便から120便に拡大した。過去の利害対立の構図を超え、3空港が連携して関西圏全体の魅力向上につなげねばならない。

 一方で、神戸にとって国際チャーター便就航は出発点に過ぎない。

 兵庫県は外国人の平均宿泊日数が1・7泊と全国最低クラスで、大阪や京都に比べ、訪日客の恩恵は乏しい。地元のシンクタンク、ひょうご経済研究所(神戸市)の推計では、国際線就航に伴う兵庫県内の経済波及効果は年間約104億円に上る。便数が2倍になれば、効果は約372億円に膨らむと試算する。需要拡大への取り組みが一層重要となる。

 世界遺産・姫路城や有馬温泉、淡路島など有名観光地に限らず兵庫県全体に訪日客を呼び込むには、各地域が多様な個性に磨きをかけ、付加価値の高い観光資源の掘り起こしが望まれる。官民の連携を深め、海外に積極的にPRする必要がある。

 岡山、鳥取、徳島など近隣県の国際線利用者の利便性向上も課題だ。新幹線や高速バスからの円滑な乗り継ぎが欠かせない。都心・三宮では西日本最大級のバスターミナルやJR駅ビルの建設が進む。ポートライナーの輸送力には限界があり、交通アクセスの充実は待ったなしだ。

 空港の防災にも万全を期したい。地震や台風で被災し機能が停止すれば影響は広範囲に及ぶ。物資の備蓄や多言語での情報発信などリスクを抑える対策の強化が求められる。