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 平口洋法相が民事訴訟法の見直しを法制審議会に諮問した。証拠を収集しやすくし、それに含まれる秘密保護の強化が目的という。法相は「民事訴訟の複雑困難化を踏まえ、審理を適正かつ迅速なものとする必要がある」と理由を述べた。

 不法行為を受けた人が民事裁判を起こして被害を回復しようとしても、証拠集めの壁にぶつかることは多い。裁判所を通じて証拠を集める「証拠保全」の手続きも、使いやすいとはいえない。原告が必要な情報を相手方から直接入手できる「当事者照会制度」を取り入れるなど、裁判を起こしやすくするための改革は欠かせない。

 一方、この見直し論議には大きな懸念もある。法務省が裁判所に提出された証拠の「目的外使用」を禁じる秘密保持命令などを導入できないか、審議会に検討を求めた点だ。刑事裁判と違って、民事裁判では証拠の目的外使用が禁止されていない。

 確かに証拠に含まれる秘密を守り、提出した側が安心できる仕組みは必要だろう。プライバシーや企業の機密情報に関わる証拠が第三者に漏れれば、長期間インターネットにさらされる恐れもある。しかし、だからといって目的外使用の防止を理由に証拠の公開を制限すれば、公権力にとって都合の悪い証拠を隠す手段に使われかねない。

 近年は相手を罵倒するなどの不当な取り調べで、検察側が国家賠償を請求される事例が相次ぐ。国が提出した取り調べの録音・録画データが訴訟関係者からメディアに渡り、報道されることも多い。法務省は2月、取り調べ映像を裁判所に提出する際は閲覧制限の申し立てを検討すべきだとも各地の法務局に通知していた。一連の動きは検察に批判的な世論が形成されることを防ぐためではないか。

 証拠が裁判所内だけでなく、社会にも共有され、幅広いチェックを受けることは公正な審理の上で有益だ。制度改革を名目に、第三者による検証の機会を一律に奪うことは許されない。

 裁判証拠は当事者だけでなく「国民のもの」でもある。公権力が不都合な証拠を「独占」できないよう、証拠の公開とプライバシー保護の両立を図る仕組みづくりが求められる。