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宿題。これさえなければ…
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宿題。これさえなければ…

宿題。これさえなければ…

宿題。これさえなければ…

 副園長の鈴木まやが名簿を指した。「淳也君はそう。萌ちゃんも。亮太君は障害の手帳はないけど、グレーかな」

 約40人の子どもが暮らす尼学。その半数は、軽度の知的障害や発達障害、それに似た「特性」がある。全国の児童養護施設でも、約3割がそうだとされる。

 「学園の職員は、一人一人の特性に必要なことを考えて関わっている。障害の有る無しは関係ないんです」

 障害は特別なことではない。それは子どもたちも同じ。一緒に笑い、食卓を囲み、ときにけんかする。尼学の日常だ。

 それでも、特性が影を落とすことがある。子どもたちは、ほかの子の障害について知らない。「それぞれの個性として伝えているが、子どもなので大人のようには振る舞えない」とベテラン職員。場の空気を読むのが苦手、距離が近過ぎる、冗談が通じない…。イライラが募ると、言葉の端々がきつくなる。

 かつて尼学にいた大介は、医師から「同じことを800回言わないと分からない」と言われた。人の気持ちを理解するのが苦手で、ほかの子との関わりでうまくいかないこともあった。

 大介は17年間尼学で過ごした。退園前日の夜、ユニットのリビングではほかのメンバーがテレビを見ていた。大介は荷造りをしながら時折、一緒に見る。話の輪に入ろうとすると、年下のメンバーが悪態をつく。「早く部屋に戻れや」。しばらくすると、それぞれが部屋に入り、大介一人だけテレビの前に残っていた。

 特性が影響するのは、子どもたちの関係だけではない。児童養護施設で暮らす子どもの多くは、虐待された経験がある。背景の一つには、親が障害を理解できず、育てられなくなるケースがある。(敬称略、子どもは仮名)

2018/9/26
 

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